韓国企業カカオからの敵対企業買収を意識か
経済産業省は昨年8月、「公正な買収の在り方に関する研究会」における議論などを踏まえて発表した「企業買収における行動指針」の中で「買収に関する透明性の向上」に触れ、企業価値を提供するものならば取締役会は『敵対的』な買収も検討しなければならない、という新しいガイドラインを明らかにした。今回の一連の動きにも、国が是正しようとしているそういった日本企業の趨勢、すなわち敵対的買収を避け、日本企業を日本人の所有下に維持し続けようとする傾向がみられるともとれる。ファンの間にも「今回の買収は海外企業の敵対企業買収防止のためでは」という噂もあり、一部のファンの間では、KADOKAWAの筆頭株主である韓国企業カカオからの敵対企業買収を防ぐために、KADOKAWAからソニーに提案したのでは、と予想するむきもある。
ソニーは既に中国企業テンセントと共同でフロム・ソフトウェア社にわずかながら出資しているが、KADOKAWAを買収した場合、ソニーはフロム・ソフトウェア社の支配権を得ることになり、テンセントは以前と同じ動きができなくなると予想される。
ただ今回の件が破談に終わらず、買収が実現した場合、たとえその動機が何であれ、買収後に行う施策を決定する前に、消費者やファンの声に耳を傾けるべきであることには間違いない。
セーラ・パーソンズ(Sarah Parsons)◎英国のリンカンシャーに拠点を置くイーストウエスト・インターフェイスのマネージング・ディレクターで、企業の異文化コミュニケーションと戦略をサポートしている。これまで多くの大手日系企業や在英日本人エグゼクティブと仕事をしてきた。また、英国広報協会(Chartered Institute of Public Relations)のアソシエイトでもあり、SOAS、シェフィールド大学、ウォーリック大学、クランフィールド大学などで日本ビジネス、異文化コミュニケーション、国際人事管理、労使関係について講義を行っている。