「世界の政治にうんざりしていませんか?」と問いかける村の新しいウェブサイトは、米国の有権者を念頭に立ち上げられたものだ。「新しいライフスタイルを取り入れつつ、新たなチャンスを掴みたい方へ。美しき楽園サルデーニャで、欧州での移住生活の第一歩を踏み出しましょう」と誘う。
メッセージは明確だ。故郷の現状に嫌気が差した人々を、オッロライはイタリアらしい気さくさで温かく歓迎する、というのである。
フランチェスコ・コロンブ村長は、ウェブサイトに輪をかけて率直だ。「実際のところ何よりも米国人(の移住)を望んでいるし、そこに注力していく」とCNNに語っている。「私たちは村の再生の担い手として、米国人に賭けている。彼らは私たちの切り札だ」
過疎化対策が急務のイタリア
オッロライの新たな住民誘致の取り組みは、米大統領選に便乗しただけのキャンペーンではない。イタリアでは全土で人口減少が社会問題と化しており、奨励金を支払ってでも移住者を呼び込もうとする自治体が相次いでいる。2022年には、サルデーニャ州が移住者に1万5000ユーロ(当時のレートで約210万円)を助成すると約束。トスカーナ州は今年、州内の魅力あふれる村々への移住者に最大3万ユーロ(約490万円)の助成金を支給する方針を表明した。移住者に住宅を無償または無償同然で提供する町もある。
イタリア環境省が2016年に発表した調査結果では、約2500の自治体で過疎化が進んでおり、25年以内に存続できなくなるおそれが明らかになった。
オッロライはゆったりとした簡素な暮らしが叶う村で、健康で長寿な人々が多く居住する「ブルーゾーン」と呼ばれる地域の一つだ。しかし、若者たちはより良い機会を求めて次々と外の世界へ出ていき、村の人口は減少の一途をたどっている。村内には高齢者ばかりが残り、空き家が目立つ。