この賞は、フォーブスの2代目の発行人である故マルコム・フォーブスが提唱した起業家精神の理想を体現し、模範となる人物に授与されるもので、生涯の功績をたたえ、国際的な事業の成功を祝うもの。
土木技師としての教育を受けたアルノー会長は、フランス北部の実家が営んでいた建設業から得たわずかな財産を運用し、世界的に知られる巨大な高級ブランド帝国を築き上げた。アルノー会長は1984年の仏高級ブランド「クリスチャン・ディオール」の買収を皮切りに、40年以上にわたってLVMHの下で一連の取引をまとめてきた。中でも最大の取引は、2021年の米宝飾品大手ティファニーの158億ドル(約2兆4400億円)での買収だった。同会長の手腕によって、LVMHは旗艦ブランドのルイ・ヴィトンやモエ・ヘネシーをはじめとする75以上の高級ブランドを擁する世界最大の高級ブランド複合企業体に成長した。同社の時価総額は3120億ドル(約48兆円)に上る。フォーブスは、アルノー会長の純資産を1560億ドル(約24兆円)と推定しており、世界長者番付では第5位となっている。
マルコム・フォーブスの息子で、フォーブスの編集主幹を務めるスティーブ・フォーブスは、授賞式でアルノー会長に賛辞を送った。「アルノー氏の経歴には、高級ブランド業界に革命を起こすことを示すものは何もなかった。しかし、偉大な洞察や革新は、他の人たちが見逃したものに気づいた、業界の外にいる人物からもたらされることが多いものだ。ベルナール・アルノー氏は、フランスの高級ブランドの至宝であるクリスチャン・ディオールが家族経営の繊維企業の中に埋もれていることを知った時、他の人々が見逃していた好機に気づいた。何か途方もないものの根幹を見たのだ」
LVMHは20万人以上の従業員を抱え、全世界で6000店以上の店舗を運営している。同社は昨年、香水や化粧品を含む事業全体が成長したことで、純利益が前年比8%増の141億ユーロ(約2兆2700億円)となり、売上高は862億ユーロ(約13兆8700億円)に達した。