スウェーデンを訪れたことがない人は、おそらく4人組ヴォーカルグループの「ABBA(アバ)」や、家具量販店の「IKEA(イケア)」、そしてある年代のテニスファンならビヨン・ボルグを思い浮かべるのではないだろうか。スウェーデンを訪れたことがあれば、甘くて美味しそうなシナモンロールや、フィーカ(定義しにくい国民的心情だが、大まかに訳すと「甘いものを食べながらコーヒーを飲んでひと息つく」という意味になるだろうか)を思い出すかもしれない。
しかし、その程度の知名度では、スウェーデン観光局の懸念を払拭するには十分とは言えない。彼らはスウェーデンの国家意識を守るために躍起になっており、世界で初めて国名の商標登録を申請した国となった。欧州連合知的財産庁(EUIPO)に出願されたこの申請は、スウェーデン観光局によると「本物のスウェーデンを体験したいと思っている疑うことを知らない旅行者を混乱させる国際的な重複から自国の名称を守るため」であるという。
ようこそ、スウェーデンへ……いや、そっちじゃない
ここで当然ながら浮かぶ疑問は「なぜなのか?」ということだ。その答えは簡単だ。実際、世界には「スウェーデン」と呼ばれる場所がいくつかあるのだ。確かに多くの人にとっては初めて耳にする話だろう。だが、ニューヨーク州北西部のモンロー郡にある、ナイアガラの滝から車で1時間ほどの、のどかな34平方マイルのスウェーデンという町に住む人々にとっては、それほど驚くような話ではない。メイン州アロストック郡にあるニュー・スウェーデンの577人の住民にとっても同様だ。世界には他にも5つのスウェーデンがあり、それらの中には、ほとんどの住民が雪に囲まれて生活するどころか、一度も雪を見たことさえないインドネシアのスウェーデンもある。