経済・社会

2024.11.22 17:45

欧州の海底ケーブル切断事件 ロシア人船長と中国船の犯行なのか

KateStudio / Shutterstock.com

欧州の海底ケーブル2本が今月、突然、破断した。原因は明らかになっていない。欧州と米国の間では「事件」「事故」の異なる主張が飛び交っている。細田尚志チェコ国防大学インテリジェンス研究所准教授によれば、欧州ではロシア人が船長を務める中国籍船の犯行ではないかという声も小さくないという。細田氏は「海底ケーブルを巡る事件事故は、原因の究明や責任追及が難しく、早急な対策が必要です」と語る。

今回、破断したのは、リトアニアとスウェーデン領ゴトランドを結ぶ海底ケーブル「BCS・イーストウエスト・インターリンク」(総延長218キロ)とフィンランドとドイツを結ぶ「Cライオン1」(総延長1173キロ)。17日から18日にかけて、2つのケーブルによる通信が突然、途絶した。
 
細田氏によれば、現時点でケーブル破断の原因は依然不明だが、通信が途絶した際に、該当海域を航行していた中国船籍の貨物船「YI PENG 3」(4万622トン)」が関与した可能性が指摘されている。ドイツのピストリウス国防相は、事故ではないとの見方を示している。
 
細田氏が中国船の航跡を確認したところ、同船はエジプトに向けてロシア・サンクトペテルブルグの西130キロに位置するウスチ・ルーガ港を出航。デンマークの大ベルト海峡に向けて航行していたが、「Cライオン1」が破断したスウェーデン・ウトクリッパン島沖合約25キロ地点の近くで何回も船首を回頭するなど、通常ではない行動をしていることが確認できるという。細田氏は「海域の水深は、おおよそ100メートル未満です。4万トン級の貨物船は300〜400メートル程度の錨鎖を備えているケースが普通で、意図的に錨を落として引きずることでケーブルを破断することは容易でしょう」と語る。細田氏によれば、オンライン上では、中国籍船の所有者が中国企業で、船長はロシア人だとして、具体的な企業名や個人名が飛び交っているという。

これに対し、米CNNは、今回の破断は事故による可能性が高いとする米当局者の発言を紹介。ロシア大統領府も20日、関与を否定し、「何の根拠もなくロシアを非難し続けるのはばかげている」と主張したという。
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文=牧野愛博

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