その中には、SKYWORTH、AITO、FORTHINGなど、35年以上モータージャーナリストをしている私でさえ、聞いたことのないメーカーも多数あった。プロポーションや外観が綺麗な中国製EVがあれば、どうかなと首をかしげるクルマもあった。
しかし、その中で展示した日本メーカーが一社だけあった。トヨタ、日産、ホンダなどのブースはなかったけれど、その唯一の日本の企業は、THKという世界的な部品メーカーだった。そして、同社が発表しかなり注目されたのは、日産自動車の元専務でデザイン・ディレクターだった中村史郎氏によってデザインされたTHKのコンセプトカーだ。でもその前に。
正直に言うと、今回のショーは2030年にタイムスリップして、違う次元に到達したような気分だった。世界ではパリオートサロンのような国際モーターショーの人気や重要性がだんだんと減っていっているにもかかわらず、中国のカーメーカーはどんどん参加してきている。欧州の市場などに思い切り進出したいからだ。電気自動車の技術的レベルから言えば、中国のメーカーはすでに欧米のレベルと並んだと言える。いや、追い抜いたと言う人もいる。デザイン的にも、性能的にも、航続距離も、それぞれの中国メーカーやクルマのルックスも独創性が育ってきた。
しかし、EU諸国の多くが中国から進出するEV との競争を警戒しているので、10月末には欧州に輸入される中国車に対する関税の上昇が話題になった。このような中国車になんと最高で35%の関税がかかるという事態になったのに対し、中国側から猛反対の声が上がった。これで貿易戦争も始まる可能性が出てきたという人もいる。
でも、それだけではない。今月のアメリカの大統領選挙に勝ったトランプ氏が先々週、アメリカに輸入される中国車に対して60%の関税をかけると言い放った。そのせいで、アメリカの物価がかなり上がるだろうと識者は見ているし、中国との関係が世界的に段々と複雑になってくると言える。