業界をリードする技術
高級車の分野では、 「『ステルス・シートスライド・システム 』と呼ぶものを開発しました。これは、レールが隠れているため、足元が広く、レールで靴が傷つくこともなく、シートの動きも静かでスムーズです」と、寺町社長は言う。「すでに欧米の航空会社で採用されているほか、新幹線でも少し異なるバージョンが採用されています」と。寺町は、多くの高級車メーカーが彼のステルス・シート・システムに興味を示していると語った。「より上品に見えますからね」と胸を張る 。
LSR-05は、93kW(800V)の可変磁束インホイールモーターを後輪に2基、フロントに220kW(800V)のモーターを1基搭載し、四輪操舵システムの一部を形成するプラットフォームを採用している。これにアクティブ・サスペンション、MR流体アクティブダンパー、電動ブレーキなどの機能を組み合わせることで、卓越した乗り心地と操縦安定性を実現している。
しかし、おそらくLSR-05の最高の特徴は、そのワイヤレス、あるいは非接触充電システムだろう。CLPSと呼ばれるこのシステムは、地面に埋め込まれた送信機を介してワイヤレス充電を可能にし、充電効率を高めるために車高を下げるアクティブ・レベル・コントロール・サスペンション(ALCS)と合わせて、電気自動車技術の未来を垣間見せてくれる。
寺町はこのように語った。「私が長年にわたって実感しているのは、例えばテスラ車のように、新しい技術が市場に投入されると、たとえその技術がまだ開発段階で信頼性が十分でなくても、マニアや裕福な人々はその車を購入するということ。そしてその技術は、より良く、より安全で、より安くするための改良と、費用対効果の高い対策という第二段階を経て、よりリーズナブルな価格の車へと濾過されていく。私たちがこのクルマでやっていることは、そういうことです。私たちのクルマには最先端の技術が採用されており、近い将来、その技術がより多くのクルマに搭載されることを期待します。」
欧米でEVの販売が失速している中で、中国のEVに重い関税をかけるポリシーは世界にどう影響するのか。しかし、そんな中でも技術を誇るTHKは次世代のLSR-06とLSR-07のコンセプトカーの開発を進めており、2025年末の東京モーターショーで公開する計画を持っているようだ。一般車にその技術がどのようにフィードバックされるのか、おおいに期待できる。