さて、そういう中国車が話題を独占するパリで、1台の日本車が光った。実は、モーターショー会場のBホールは、ほとんどと言っていいほど、中国メーカー車で埋まっていた。その中で、中国車と同じぐらい目立っていたのが、最先端技術が詰まったその日本車だ。
その企業は一般人には聞き慣れないTHK社というハイテク部品サプライヤーだけど、国際メディアに特に注目されたのは、そのコンセプトカーのルックスとそのデザイナーにあった。
日産GT-Rの伝説的なデザイナーであり、現在は自身のデザインスタジオを運営する中村史郎が、ハイテク部品サプライヤーTHKと組んで、1台の高級コンセプトカーを手掛けた。ステージ上で中村氏とTHK社の寺町彰博社長がアンベールした「LSR-05コンセプト」は、日本国外初公開だったのだ。
やはり、フェラーリやメルセデスベンツ、そして多くの日本のカーメーカーに部品を提供している世界一流パーツメーカーと、世界一流のクルマのデザイナーが手を組んで生み出したコンセプトカーを披露すれば、メディアやライバルが注目するのは当然だ。「最も格好良いEV車の一つですね、さすが中村さん!」とイタリア人の同僚が言った。
4人乗り4輪駆動の流麗なクロスオーバー・クーペ「LSR-05コンセプト」は、中村のSNデザイン・プラットフォーム・スタジオが手がけた未来的なボディに巧みに包まれ、目を見張るような超ハイレベルな技術を誇る。いうまでもなく、中村氏は日産自動車でデザイン・ディレクターとしてGT-R、Z、ジューク、キューブなどを生み出したことで知られている。その彼がデザインしたLSR-05のビジョンは、ラグジュアリー(L)、スポーティ(S)、レボリューション(R)の理想を融合させ、ダイナミックな4シーター・クロスオーバー・クーペに仕上げることだった。
THKは精密機械部品やリニアモーション技術を専門とし、自動車のパーツだけでなく、医療機器、航空宇宙、産業機械、ロボットなどの分野で活躍している。また、フランスにも生産拠点を持ち、ヨーロッパ、北米、アジアを含む世界各地に40の工場を運営している。
自動車の部品では、インホイールモーター、アクティブサスペンション、電気式バイワイヤ・ブレーキシステムなどの部品をアメリカのビッグ3やイタリアのスーパーカーメーカー、そして日本のほとんどの自動車メーカーに供給しているTHKは、テスラとボッシュとボーイングを足したような存在だ。
このプロジェクトは量産を視野に入れて設計されており、THKが独自に開発した複数の技術ソリューションが採用されている。寺町社長は、このプロジェクトを市場に投入するためには、販売チャネルが広く、必要に応じてメンテナンスが可能な企業との提携が必要だと語る。