しかし、これらの注目を集める要求のほかにも、政府はグーグルの人工知能(AI)分野における競争力を損なう可能性のある条項をこの是正案に盛り込んでいる。司法省は、グーグルが検索分野で強みとなるテクノロジーを持つAI企業に投資を行なうことを禁止することを提案した。司法省はさらに、グーグルが、検索分野で競合するAI企業と合弁事業を行なうことや、買収や提携を禁止することを求めている。
ここで注目すべきは、この提案に裁判所が同意した場合に、グーグルがAI企業のAnthropic(アンソロピック)の持ち分の売却を迫られる可能性があることだ。グーグルは昨年、2021年にOpenAIの元幹部によって設立されたアンソロピックに20億ドル(約3090億円)を追加投資することを約束しており、英国の規制当局は先日、グーグルのこの投資に承認を与えていた。
アンソロピックが開発したClaude(クロード)と呼ばれる大規模言語モデル(LLM)は、グーグルが検索エンジンに統合したGemini(ジェミニ)と同様に、ユーザーの質問に対する答えをAIで生成する。アンソロピックは自社のLLMを、検索のツールとして売り込んではいないが、この種のチャットボットはグーグルの検索サービスの脅威になるとみなされている。また、司法省のこの提案は、グーグルがジェフ・ベゾスやエヌビディアが出資するPerplexity(パープレキシティ)を買収対象とする可能性を排除することにもつながる。
さらに、この提案は、グーグルがYouTubeクリエイターを含むコンテンツの制作者やパブリッシャーに対し、AIモデルやAI製品のトレーニングに彼らのコンテンツが使用されることを拒否するための簡単な手段を提供することを求めている。
ノースイースタン大学の経済学および反トラスト法教授のジョン・クォカは、「AIがテクノロジー界を席巻する中で、政府は、新しい強力なテクノロジーが既存の巨大企業によって不公平に支配されないようにすることを目指している」と述べている。
グーグルは、この記事へのコメントを控えたが、同社の最高法務責任者を務めるケント・ウォーカーは、21日に公開されたブログの投稿で、司法省の提案が「当社のAI投資を冷え込ませる」とし、「現代で最も重要なイノベーションにおけるグーグルの主導的役割を阻害する」と主張した。