WOMEN

2024.11.27 08:30

CoCo壱バイトからFC社長へ一足飛び「フリーターの星」が日本の閉塞感を打破する:WOMEN AWARD〈個人部門〉受賞者インタビュー

諸沢莉乃|スカイスクレイパー 代表取締役社長。2001年、秋田県生まれ。高校1年時からCoCo壱番屋緑区中山店でアルバイトを開始。21年に接客スペシャリスト「スター」を獲得し、スカイスクレイパー次期社長に任命される。店長業務などマネジメントを学び、24年5月に社長就任。

ダイバーシティ実現への第一歩に位置づけられる女性活躍だが、毎年のジェンダーギャップ指数ランキングで、 日本はG7最下位に沈み続けている。

Forbes JAPANが主催する「WOMEN AWARD 2024」では、そんな閉塞した社会に風穴を開ける新たなリーダーを選出。

個人部門で「チェンジメーカー賞」に選ばれたのは、「カレーハウスCoCo壱番屋」などをフランチャイズする年商22億円の会社の社長に抜擢された、アルバイトあがりの22歳。チャンスを味方に、エンパワーメント力を強みに、加速度的に成長中だ。



「現在の日本において、いわゆる活躍されている多くの女性は、非の打ちどころがない学歴や職歴をもっている方が大半。でも、そんな“完璧”といわれる経歴をもつ女性はごくひと握りです。誰もが活躍できる社会、誰もがいつからでも学ぶことができる社会、何かにチャレンジできる社会の実現はこれからの日本には非常に重要です。そうした社会への期待を込めて彼女を推薦します」

本アワードのアドバイザリーボードを務めたサニーサイドアップグループ社長の次原悦子が述べる通り、諸沢莉乃の登場は、日本全体を覆う閉塞感を吹き飛ばしてくれるのではないかと期待させる。

多くのマスコミが彼女に注目したのも、若い女性という理由だけではない。諸沢のポジティブさ、ひたむきさこそ、今の世の中が求めているものだからだ。

周囲を巻き込んでいく力がある

話題性が先行しているのも事実だが、現場で鍛えた接客力は折り紙付きだ。諸沢は、全国に1200店以上ある「カレーハウスCoCo壱番屋」のなかで、2021年当時15人しかいなかった「スター」の称号を最年少で獲得した接客のプロフェッショナル。周囲にポジティブなエネルギーを与える存在を、前社長の西牧大輔は「これから続く人たちのロールモデルになる」と見逃さなかった。

諸沢を社長にふさわしいと感じた点を西牧に尋ねたところ、「素直でへこたれない」こと、そして何よりも「CoCo壱番屋とスカイスクレイパーの理念に共感していたこと」だと言う。

経営者という観点でいえば彼女はド素人だが、素直でへこたれないメンタルの強さがあれば、今後の努力次第でどうにでもなる。しかし、企業理念を体現し、周囲を巻き込んでいける存在となるとなかなかいない。「人間性重視」「意志あるものにはチャンスを」といったスカイスクレイパーの理念そのものである諸沢がトップとなることで、従業員のやる気を促し、組織に活気をもたらす未来を西牧は見たのだろう。

さらに言えば、採用面でも良い影響が期待できる。外食産業は深刻な人手不足に悩まされているが、アルバイトとも年齢が近い諸沢が注目されれば、人材獲得や育成の面で断然優位になるからだ。
今も店舗を回り、自ら接客もする。 好きなココイチメニューは「豚しゃぶ カレー+旨辛ニンニク+マヨネーズ」。

今も店舗を回り、自ら接客もする。好きなココイチメニューは「豚しゃぶ カレー+旨辛ニンニク+マヨネーズ」。

「現場で一緒に汗をかき、一緒に会社をつくっていきたい」という諸沢が、社長就任後に最初に行ったのも、意志の共有だった。社内の有志で理念や信条、行動指針を「クレド」にしたのだ。そのなかで諸沢が特に好きな一節は「素直最強、頑固最悪」。変化を恐れず、常に前を向いている彼女にふさわしい言葉だ。

そんな諸沢に、前出の次原はこうエールを送る。

「諸沢さんはここからが始まりです。ここから経営者に必要なたくさんのことをきちんと学び、本物の実力ある経営者に成長してほしい。そして多くの夢を諦めてしまっている女性たちのロールモデルになってほしいと思います」
チェンジメーカー賞
自らがロールモデルとなり、多様な人の活躍を推進するムーブメントを起こした女性に贈られる賞

文=古賀寛明 撮影=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 2025年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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