ただ、社内にアーティストがいて、デザイン部門があってもアートとの接点が薄いとよく聞くように、アーティストと企業がただ一緒に座っているだけでは、何も起こりません。アーティストと企業、政府がコラボレーションするためには、経済的にも持続可能な仕組みの中で、継続的に議論することが重要です。
──これまでのお話を振り返ると、アート、テクノロジー、ビジネスがより密接な関係になったことで変化が起きているのだと理解しました。では今後、本日のテーマ「アートが変える個人・組織・社会の未来」について、どのように取り組んでいきたいと考えていますか?
アセガ:最近、NFTの発明者であるケビン・マッコイが2013年にニューミュージアムのチームに送ったメールを読む機会がありました。
「ニュー・ミュージアムがインキュベーター・プログラムを始めると聞いた。ブロックチェーンを使ってデジタル・アーティストの作品販売を支援するというアイデアをもっているんだけど、どう思う?」
それが後にNFTの造幣プロセスとなることを、誰が想像できたでしょう? NEW INCが未来のためにできることは、今後も、聞いたこともないようなアイデアや意見をまずは受け入れることです。そのためにも、今回のイベントのように、ニューヨークの外でももっと多くの場所であらゆる境界を超える会話を生むスペースを作りたいと思っています。
小川:今後さらに、私たちのようなインタフェースや触媒となる存在が、アートと個人・組織・社会を接続するコミュニティを維持、ケアすることが重要だと感じています。こうしたコミュニティは長い時を経て文化になります。「culture」には「育む」という意味もあるように、時間をかけて大切にしなければなりません。
アートが社会や個人をどう変革できるか。未来の社会では、これまでにない新しい教育が必要とされます。アートは、新しいリベラルアーツとして、文化についての議論を始める上での基盤になるでしょう。そしていずれ、社会におけるすべての経済活動と関わっていくと感じています。