理路整然と間違うよりも「大まかに正しい」ほうがいい データから未来を見通す方法

「投資の巨人」バフェットとソロスの薫陶を受けた阿部修平(投信投資顧問会社 スパークス・アセット・マネジメント株式会社代表)と考える対談シリーズ、第8回。今回はイノベーションの歴史が「第3章」に入った時代の俯瞰のしかたについて。
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藤吉:我々の雑誌でよく「未来予測」の特集をやるんですが、その企画を考えるのに編集者たちがいつも苦労しているんですね。もちろん未来のことは誰にもわからないので当然といえば当然なんですが、一方で阿部さんのような投資家は、ある程度、未来を予測しながら投資されているわけですよね。

阿部:藤吉さんの仰るとおり、未来のことは誰にもわからないので、「今、わかっていること」を徹底的に調べようというのが僕らのスタンスですね。

藤吉:阿部さんはこの連載でも「わかっていること」として多彩な統計データを駆使して先の見通しを語っておられます。それで僕も若い編集者に「統計を見て、そこから分析してみたら?」なんて受け売りで言ってるんですが、自分でそれができるかといえば、できないんですね(笑)。そこで今日は改めて、「データから未来を予測する方法」を阿部さんにうかがってみようと思ったんです。
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阿部:いえ、あくまで〝我流〟なんですよ。例えば、ここにアメリカと日本の株価の時価総額の推移を比較したグラフがあります。

※ 欧州4カ国は、ドイツ、英国、フランス、イタリア。 中国の年平均成長率の期間は2003年-2020年 出所: 世界銀行、スパークス・アセット・マネジメント

※ 欧州4カ国は、ドイツ、英国、フランス、イタリア。 中国の年平均成長率の期間は2003年-2020年 出所:世界銀行、スパークス・アセット・マネジメント

これを見るとアメリカ株はこの35年で約16倍の約4000兆円になったのに対して、日本株はずっとほぼ横ばいで今は約700兆円です。じゃあこれから先、それぞれの株価が倍になる確率はどちらが高いかな、と考えるんです。4000兆円が8000兆円へと上昇するのと、700兆円が2倍の1400兆円になるのと、どちらがありえそうか。

藤吉:日本の方が伸びしろはありそうですよね。

阿部:その程度の話で、それほど厳密な理論的背景があるわけじゃないんです(笑)。

藤吉:でも考え方としては合理的ですよね。

阿部:投資を仕事としている以上、第三者を納得させるだけの根拠は必要になります。
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text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波をつかむ12の方法 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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