経営・戦略

2024.11.24 11:30

レイオフ断行でも憎まれないCEO、会計ソフト大手の危機に挑む

「私がStubHubの経営で最も誇りに思うのは、あの危機を乗り越えたことです。再編を通じて負担を70%軽減したうえで後継者に引き継いだのです」
 
それからの2年間、シン・キャシディは可能性を信じることについて本を書き、投資を始め、カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くベンチャー・キャピタルAcrew Capital(エイクルー・キャピタル)と共に多様性をキーワードにしたファンドに貢献しつつ、次の仕事を探した。彼女は言う。

「そしてXeroを見つけたのです。Xeroが私を見つけたと言ってもいいかもしれません」

Xeroは世界180カ国に展開してはいるものの、オーストラリアとニュージーランドでの売り上げが突出しており、24年の年次報告によると、両国合わせた売り上げは9億7000万NZドルだが、それ以外の国での売り上げは合計7億4400万NZドルにとどまる。有料契約者の総数は世界全体で前年比11%増の420万人だが、半数以上をオーストラリアとニュージーランドが占め、110万人は英国在住者だった。北米の契約者は3万8000人増えたものの42万2000人にとどまり、太平洋を越えた事業展開の難しさとチャンスの大きさをうかがわせる。
 
シン・キャシディは、何度か難しい局面もあったことを認める。そのうえで言うのだ。

「Xeroとその社員を心から誇りに思っています。より大きな野心を追求するために難しい決断を下してもいいのだと、彼らも学びつつあるのではないでしょうか。会社としての目標について話すとき、彼らが共鳴しているのを感じるのです」


Xero◎2006年、ニュージーランド人の連続ハイテク起業家ロッド・ドラリーと会計士のハミッシュ・エドワーズが創業。小規模事業を対象とした、企業の経理業務におけるワークフロー、コンプライアンスなど、会計業務の効率化のためのクラウドベースのサービスを提供する。12年にオーストラリア証券取引所に上場。

スキンダー・シン・キャシディ◎2023年2月にXeroのCEOに就任。1970年、ケニア・ナイロビ生まれ。両親は内科医。幼いころに両親と共にカナダに移住し、オンタリオ州ウェスタン大学で経営学の学位を取得した。卒業後はメリルリンチのニューヨーク本部、ロンドン支店などでアナリストとして働いた後、米カリフォルニア州に移住。10年からCEOを志す。

文=マーク・ホイッテカー 翻訳=フォーブス ジャパン編集部 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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