さらに悪いことが待っている。米国のジョー・バイデン政権はウクライナに対して、供与している最も高性能な米国製弾薬をロシア領内の目標に対する攻撃に使用することをついに許可した。
ザポリージャ州の前線から25kmほど南のタウリヤ周辺の上空を飛行していたウクライナ軍のドローン(無人機)は、樹林帯の脇に停められた車両付近にロシア兵が多数集まっているのを発見した。一連の流血の事態の始まりだった。
ウクライナ陸軍の米国製高機動ロケット砲システム(HIMARS)から、ロケット弾少なくとも3発が撃ち込まれた。この砲撃によって、集まっていたロシア兵のうち多数が死傷したとみられる。
ウクライナ軍の砲兵たちは冷酷にも、砲撃をいったん止め、ロシア側が負傷兵をトラックに運び入れるのを待った。そのあとに、生存者らに4発目のロケット弾を撃ち込んだ。この1発は、擲弾(てきだん)ほどの大きさの子弾400個あまりが詰め込まれたクラスター弾頭型のM30だったのかもしれない。
A Ukrainian 🇺🇦 HIMARS Strike in Zaporizhzhia that ended in over 40 Russian soldiers being seriously injured and killed pic.twitter.com/8hrSC8EUe3
— Ukraine Battle Map (@ukraine_map) November 16, 2024
凄惨な殺戮だが、これには目的もある。ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州とロシア西部クルスク州に兵力を集中させるかたわら、ザポリージャ州でも前線への圧力を高められるほどの兵力を割いている。
ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)によると、ロシア軍は2025年3月までに、ザポリージャ、ドニプロペトロウシク、ドネツクの3州が接するザポリージャ州テミリウカ村一帯の占領に向けた条件を整えようとしている。テミリウカは現在の接触線から数km北に位置する。
ウクライナ軍もドネツク州とクルスク州に兵力を集中させているが、目標を絞ったロケット弾攻撃で南部でのロシア軍の兵力増強を妨害することはできる。