土俵に乗れた、光が見えた
ACKプログラムディレクター山下有佳子に、閉幕直後、インタビューの機会を得た。山下は「一言でいえば、日本のアートフェアとしてどうこうではなく、世界のアートイベントの一つとしてACKというブランドを確立できた」と総括。数字の面でも、高額作品が売れるなど「昨年より強い」売り上げを達成でき、世界的に市況が冷え込むなか、日本のアート市場の堅実性を見せられたと話す。
その上で、数日間の華やかなフェアの舞台裏で、長い時間をかけて各国で行ってきた地道なプロモーションにも触れた。この1年、平均して月1回は各国のフェアやフェスティバルを訪問し、アートを通じた「社交」を重ねてきたという。それが良質のギャラリー参加やトップコレクターの来日にもつながり、「ACKが国際的なアートカレンダーで確固たる位置を築いた」と実感している。
見えない部分に関しては、ACKがインパクトあるフェアになってきたからこそ、その「環境整備」にも注力。例えば、日英バイリンガルスタッフが対応する託児所の無償サービスは、ゲストのみならず、来日したギャラリストや百人を超すACKスタッフの安心につながる。「日本のアート業界は、支える環境に改善の余地がある」という課題を見つめ、ACKからポジティブな変化を起こしていきたいと考えている。
未来のアート界を見据えた取り組みとしては、インハウスのエデュケーションチームがキッズプログラムを企画し、子どものうちから国際水準のアートを見る、つくる機会を提供。実際に「子どもの入場者が昨年よりも増え」、手応えもある。
いかに京都の人に愛されるフェアになるか、というローカルエンゲージメントについて尋ねると「ただアートを販売するだけでなく、京都が一丸となり文化体験を作る週末になった。継続は必要だが、4年目にして光が見えてきた」と笑顔を見せた。それを温めていくためにも「質の高さ」にこだわり続けていくという。
アジアの中ではインフラ整備で韓国や香港が勢いを増す中、日本でも世界的な影響力のあるフェアの整備が求められている。STPIのEmiは「日本には倉敷の大原孫三郎など、実業家が私財を投じて文化支援を続けてきたグレートヒストリーが各地にある」とも話していた。歴史や地域の魅力を引き出した特色あるフェアの広がりが、日本のアートシーンをさらに盛り上げることに期待したい。