働き方

2024.11.21 08:00

「オフィス復帰」をめぐる、企業と従業員の力関係

ウィラハンの指摘によれば、かつての従業員たちは、雇用の安定と引き換えに、週5日オフィスで働くことに満足していた。企業に忠誠を尽くす限り、自分が望めば定年まで働けると認識していた。しかし今や、企業による大規模な人員削減のニュースを頻繁に見聞きするようになった。企業の大多数が利益を優先し、従業員をないがしろにすることを、従業員たちは知っている。安定した職を確保する上では、個人として優れた実績を上げるだけでは不十分なのだ。

そのため従業員は、雇用が不安定であることの見返りとして、より柔軟な働き方を求めている。「生き残りを賭けた世界であり、人々は常に、時間とお金を天秤にかけている」とウィラハンは言う。

では、柔軟な働き方が業績向上につながるのはなぜだろうか。その答えは単純で、燃え尽き症候群が関係している。ウィラハンは「燃え尽きる人が急増している。人々がストレスレベルの上昇を訴えていることは否定できない」と述べる。そして、そうしたストレスと関連する事実として、現行の働き方のモデルが、現代のジェンダー・ダイナミクスならびに経済の現状に合わせてアップデートされていない点を指摘している。

「夫が外に働きに出て、帰宅すると妻が用意した夕食が待っているという時代は終わった。以前なら、そうした男女の役割分担が機能していたが、現代の労働者はそんな暮らしを送っていない。いまや夫も妻も働く共働き世帯が普通で、優れた働きを期待され、子育てにはお金がかかる。また、都市部に家をもつ金銭的余裕などもはやなく、通勤時間が延びても仕方がないと考えられている」とウィラハンは説明する。

企業も経営者も、時代遅れの考え方を克服して進化し、競争力を維持しなければならない。「企業の経営者は、100年前の考え方から抜け出せていない。そうした考え方は、私たちが職場内で身に着けようとしているスキルと結びついていないと思う」とウィラハンは語った。「私たちは、経営サイドに関して根本的に失敗している」

柔軟な働き方を試験的に導入する

4 Day Week Globalは、異なる状況に応じた柔軟な働き方を的確に試験導入できるよう企業を支援している。柔軟な働き方を短期的に試験導入した後も長く成功させていく上で、カギとなる取り組みの一つは、離職率や売上、生産性、ウェルビーイングの自己申告内容などのデータを、試験導入の直前と直後に収集することだ。

自社と似た企業や地域で成功した事例を示せば、社会的な証明となる。成功例を社会化することで、新しい働き方の哲学を試そうという機運が高まる、とウィラハンはアドバイスしている。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事