一方、彼らのようなトレーダーを食い物にする詐欺師たちも存在する。詐欺師たちはパンプ・アンド・ダンプなどの手法を用いて、コインの価格を一時的に釣り上げてから大量に売り抜けている。しかし、トレーダーたちが心配していないことが1つある。それはこの分野の規制についてだ。
「ミームコインは一般的に証券には分類されない。なぜなら、将来の利益の保証がないからだ」と、ニューヨークの法律事務所Cea Legalのミケーレ・チェアは語る。「ミームコインは、開発者やインフルエンサーが将来的な利益を約束するものではなく、その価値は、主に投機的な取引や世間の評価によって決められている」と彼は説明した。
もちろん、これはコインの開発者やトレーダーを、詐欺や虚偽広告から守るための一般的な法律から除外することを意味しない。しかし、暗号資産に友好的で、規制に反対の立場をとるトランプ次期大統領のもとで、政府の監視が強化されることはなさそうだ。
世界の若い世代の「絶望」
ミームコインの熱狂を、単なる「21世紀版のチューリップバブル」と片づけてしまうのは簡単だ。しかし、この荒唐無稽なデジタル資産に多くの若者が没頭しているという事実は、憂慮すべき現実を浮き彫りにしている。「暗号資産業界の人々は今になってようやく、トークンこそが真のプロダクトだという考えに目覚めつつある」と、9月にシンガポールで開催された暗号資産版のダボス会議『TOKEN2049』の壇上で、自らを「ミームコイン・ジーザス」と称するムラド・マフムドフは語った。
マフムドフは、アゼルバイジャン出身でプリンストン大学で学び、ゴールドマン・サックスに勤めた後に暗号資産業界に本格的に身を投じたとされる。彼がTOKEN2049で行った講演のYouTube動画の再生回数は、20万回を超えている。
マフムドフの見解では、キャッシュフローを生み出さず価値の保存手段にもなり得ない資産(ビットコインを除く全ての暗号資産)は、実は最初からミームコインだったという。彼に言わせれば、ミームコインの熱狂は、若者たちが抱える「金融ニヒリズムの症状」であり、学生ローンの負担やAIが初歩的な仕事を奪うという現実、家を持つという基本的な夢すら手の届かないものになってしまった世代の絶望を反映している。
「この世界のシステムはひどいものだ。お金を稼ぐにはミームコインの取引をするしかないんだ」と、サウスカロライナ在住のミームコイントレーダーのサックスは語る。「私は株の取引も得意だが、桁違いのリターンが欲しいなら、これをやるしかない。これが一番儲かっているし、普通の仕事よりも稼げる」
ここには、S&P500に幻滅した株式投資家たちを対象にしたパロディのミームコインも存在する。それがSPX6900だ。このコインのマニフェストの一節には、こう書かれている。「私たちは、家を買うために数十万ドルの住宅ローンを組まなければならない世界に生まれた。社会保障費は毎回の給料から差し引かれるのに、実際には役に立たない。このコインは、それをリセットするものだ。SPX6900は、明日という森の種をまく」
SPX6900は現在、79セントで取引されており、時価総額は7億3900万ドル(約1140億円)に達している。このコインは、過去1年で約5800%上昇したが、同期間のS&P 500の上昇率は37%に留まっている。
(forbes.com 原文)