ミームコインの投機は一般人が決して手を出すべきものではない。BDCによると、ミームコインはビットコインの50倍のボラティリティを持ち、詐欺の温床にもなっている。プロジェクトの約40%が「ポンプ・アンド・ダンプ」と呼ばれる価格操作詐欺であり、30%が「ラグプル」と呼ばれるコインの開発者が資金を持ち逃げする詐欺だ。
この市場には、規制も取り締まりもほぼ存在せず、人工知能(AI)ボットが市場を操作して激しい価格変動を引き起こす。そして、BDCの推計によると、ミームコインの平均寿命はわずか78分で、無価値に終わる宝くじのように消えていく。
「こんなのは基本的には巨大なカジノだと分かっている」と語るKクリプトは、これまで3年間をかけてコンピュータサイエンスの学位を取得したというが、その努力が無駄だったと考えている。「プログラマーなんてこの先、AIエージェントに取って代わられるのが見えている」
ミームコインの「製造工場」
このシュールな経済を支えているのは、「ミームコイン製造工場」とも言えるソフトウェアのPump.funだ。今年1月に開設されて以来、Pump.funはズムルやKクリプトのような一攫千金を狙うトレーダーたちのために、300万以上の新たなミームコインを作成してきた。このソフトウェアは無料で使える。必要なのは、優れた(もしくは単純にバカな)アイデアとデジタル画像、そして数クリックのみだ。Pump.funはソラナのブロックチェーン上に構築されており、全てのミームコイン取引から1%の「スワップ手数料」を得ている。また、トークンの時価総額が9万ドル(約1400万円)に達してソラナの最大の分散型取引所のRaydiumに上場されると、追加で1.5ソラナトークン(約5万4000円)を徴収する。
Pump.funでは毎日1億ドル以上のミームコインが取引されており、FartcoinやMooDeng、LOLなどの目立つコインの存在もあって、すでに1億8000万ドル(約278億円)の収益を上げている。このプラットフォームの急成長が、1030億ドルにものぼるソラナの時価総額を支えており、過去12カ月で288%も上昇した一因となっている。
Pump.funは、かつてブームを呼んだデジタル資産NFTの世界で一攫千金を狙っていたヨーロッパ在住の20代の起業家3名によって創設された。2022年にこのうちの2人はNFTの恒久的な先物契約を取引するプラットフォームのNftperpで働いていたが、この市場の崩壊を受けて、ミームコインへと方向転換した。
創業者のアーロン・コーエンは3000人以上のミームコイン取引者にメッセージを送り、彼らのフィードバックを元にPump.funを開発し、Web3のアクセラレーターのアライアンスDAOから35万ドル(約5400万円)を調達して事業を立ち上げた。