今年5月、友人たちと数週間前に作成したミームコインのJail Cat(ジェイルキャット)を瞬く間に190万ドル(約2億9000万円)の時価総額に押し上げたロンドンに住む16歳のオリバー・ズムルは興奮で声を震わせながら「マイアミに行こう! ランボギーニを手に入れるぞ!」と叫んでいた。
いたずら好きの猫を画像をアイコンにしたこのトークンは、その翌日に250万ドル(約3億9000万円)以上に急騰した。しかし、その興奮もつかの間、ジェイルキャットは暴落し、11月13日時点で約8万7000ドル(約1300万円)にまで落ち込んでいる。
ジェイルキャットは投機の対象になる以外には、何の目的や実用性もなく作られた、いわゆるミームコインであり、その価値は、誰がいくらを払うかのみで決まっている。しかし、その価値は時に爆発的に上昇する。最も有名なミームコインであるドージコインは世界で6番目に価値のある暗号資産となり、時価総額は470億ドル(約7兆3000億円)に達している。
家族とともにポーランドから英国に移民としてやってきたズムルは、ミームコインが自分の未来だと決めて、4月にZoomWealthというYouTubエチャンネルを開設して、そのコツを教えると宣言した。その後の数カ月で10万ドル(約1500万円)を稼いだ彼は、他にもCat Poop JoystickやLivemom、Sigmaなどのミームコインで利益を上げている。
「気が弱い人は手を出さないほうがいい」と語るのは、ベルリンのWeb3マーケティング企業Hypeに勤務する31歳のレイチェル・サックスだ。彼女もズムル同様、ミームの取引に熱中しており、11万ドル(約1700万円)相当を保有している。「一日中取引する時期もある」と話す彼女は、1日で1万ドル(約155万円)を失うことも珍しくはないという。
ドバイに住む23歳のYouTubeインフルエンサー、Kクリプトも、ミームコインで100万ドル(約1億5500万円)以上を稼いだと主張している。彼が作った最も価値のあるコインは、BrianWifHairと呼ばれるコインベースの著名なスキンヘッドのCEO、ブライアン・アームストロングをネタにしたもので、「3、4時間で100万ドル(約1億5500万円)に急騰して、その後はゆっくりと消えていった」という。
史上最も馬鹿げたマネーゲーム
暗号資産市場にこれまでで最も無意味で馬鹿げたマネーゲームのブームが訪れている。かつては新たな暗号資産を作るためには数学の知識やプログラミングのスキルが必要だったが、今では無料で使えるソフトウェアを使って、誰でも数クリックでミームコインを作成できる。エストニアに拠点を置くブロックチェーンのコンサルティング会社BDCによると、毎日4万から5万の新たなミームコインが作られており、2024年にはすでに1300万以上のミームコインが誕生し、その時価総額の合計は約1000億ドル(約15兆5000億円)に達している。