関係筋が米ブルームバーグ通信に語ったところによると、米国の司法省、連邦捜査局(FBI)、内国歳入庁(IRS)の3機関は、ケリモフの資産を保有するヘリテージトラストにシティグループが提供しているサービスについて調査を進めている。
ケリモフは米デラウェア州に拠点を置くヘリテージトラストに10億ドル(約1600億円)相当の資産を保有していたが、米財務省は2022年6月、ケリモフが米国の企業に投資するために「親族や顧問などの人脈を利用している」として、この資産を凍結していた。
米金融誌バロンズが事情を知る人物の話として伝えたところによると、これら3機関は、マネーロンダリング(資金洗浄)をはじめとする金融犯罪への防止策など、シティグループの金融コンプライアンス(法令順守)体制についても調査する予定だという。フォーブスはシティグループへの取材を試みたが、回答は得られなかった。
ケリモフは米金融大手のモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス、独金融大手ドイツ銀行のほか、ロシア国営天然ガス企業のガスプロムにも投資している。後にロシア最大の金鉱企業ポリュスの株式37%を取得した。フォーブスの推計では、ケリモフの資産は約107億ドル(約1兆6600億円)に上り、最新の長者番付では世界で230番目に裕福な人物とされている。
ロシアの新興財閥オリガルヒであるケリモフはここ数年、米当局の監視の対象となっていた。米財務省は2018年、ロシア政府や同国のウラジーミル・プーチン大統領との関係を利用して金銭的利益を得たとして、ケリモフに制裁を科した。同省によると、ケリモフは2017年、数億ユーロ(数兆円)規模の資金洗浄を行った疑いで、フランスで拘束された。米司法省は2022年、ケリモフが所有する3億ドル(約460億円)相当の超大型高級ヨットを差し押さえた。これについて同省は、ケリモフが米国やその他の国の資金洗浄のためにそのヨットを使用したからだと説明している。
シティグループは数カ月前にも、内部プロセスを巡って米当局からの取り締まりを受けた。同社は7月、リスク管理サービスの監視を改善しなかったとして、米通貨監督庁(OCC)から7500万ドル(約116億円)の罰金を科された。
(forbes.com 原文)