はしかは感染力が非常に強く、死に至る場合もある。特に幼い子どもで重症化しやすい。昨年、推定10万7500人がはしかで命を落とし、そのほとんどが5歳未満だった。この数は前年から約8%増えている。
WHOによると、はしかの流行を抑え、重症化を防ぐためには、ほぼすべての子ども(95%)がワクチンを2回接種する必要がある。昨年、推奨されている2回のワクチン接種を受けたのはわずか74%で、87%が1回のみの接種だった。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は声明で、「はしかのワクチンは過去50年間で他のどのワクチンよりも多くの命を救ってきた」と指摘。「さらに多くの命を救い、感染すれば死に至ることもあるこのウイルスが最も脆弱な人々に害を及ぼすのを食い止めるために、居住地にかかわらずすべての人がワクチン接種を受けるようにしなければならない」と訴えた。
はしかの症状
はしかは空気感染し、感染者が咳やくしゃみをしたときに発生する飛沫で広がる。感染すると高熱や咳、鼻水といった症状に加え、特徴的な発疹が全身に現れる。失明や脳炎、中耳炎、腸炎、肺炎といった深刻な合併症を引き起こすこともある。ワクチンは、はしかを引き起こすウイルスに反応するよう体を訓練し、はしかにかかりにくくする。はしかの特別な治療法はないが、米疾病管理予防センター(CDC)によると、症状を緩和することはできる。
米国では、はしかは比較的まれだ。昨年報告された症例はわずか59例だった。これは主に幼児を対象としたワクチン接種プログラムを長年にわたって展開してきたおかげだ。
にもかかわらず、はしかの流行はいまだに続いている。CDCによると、今年米国ではこれまでに277人の感染者が確認されている。
ワクチン懐疑論
ワクチン懐疑論がはしかの感染率の上昇につながっているとよく指摘される。麻疹・おたふくかぜ・風疹の3種混合ワクチン(MMRワクチン)は、安全で効果があることが科学的に証明されているにもかかわらず、長い間論争の的となってきた。1990年代から2000年初めにかけて、医学誌『ランセット』に掲載された英国人の元医師アンドリュー・ウェイクフィールドの不正論文がワクチン接種に対する疑念を煽った。ウェイクフィールドは、MMRワクチンの接種と自閉症を関連付けるかのような虚偽の研究を発表し、後に医師免許を剥奪された。
実際にはそのような関連性はない。ランセットは2010年にウェイクフィールドの論文の掲載を撤回した。
だが、自閉症関連の懐疑的な見方はまだ根強く残っている。ウェイクフィールドが移住した米国でもこの見方は広まった。
ドナルド・トランプ次期米大統領が厚生長官に指名したロバート・F・ケネディ・ジュニアはワクチンが自閉症と関連しているという主張を長年広めてきた。
ケネディは「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス」という反ワクチンを唱える団体の会長を務めていたが、現在はその職を離れている。この団体は、SNS上ではしかのワクチン接種など健康問題について誤った情報を拡散していることで知られている。
(forbes.com 原文)