「させていただく」の正しい意味と敬語としての位置付け
「させていただく」は、動詞「する」に謙譲の意を加える表現です。相手の許可を得たうえで、恩恵を受ける行動をへりくだって伝える際に使います。丁寧で謙虚な印象を与えるため、ビジネスシーンでは頻繁に使用されます。しかし、条件を満たさない場面での使用は誤用となるため、注意が必要です。
文化庁が示す「させていただく」の使用条件
文化庁の「敬語の指針」によると、「させていただく」が正しく使われるためには以下の2つの条件を満たす必要があります。
相手または第三者の許可を得ていることが必要です。
その行為により自分が恩恵を受ける必要があります。
たとえば、会議のスケジュール変更や訪問の申し出など、相手に許可を求める行為には適しています。一方で、自分の行為が完全に独立している場合や、相手の許可が不要な場合には不適切とされます。
よくある「させていただく」の誤用と正しい使い方
「させていただく」は多用されるがゆえに、誤用されやすい表現でもあります。ここではよくある誤用例と正しい使い方を比較します。
誤用例:許可不要な行為への使用
例1:「本日は休ませていただいております」
解説:この場合、休む行為に相手の許可を得る必要はありません。適切な表現は「本日は休んでおります」です。
例2:「資料を見させていただきました」
解説:「資料を見る」行為に相手の許可を得る必要がない場合には、この表現は誤用です。「資料を拝見いたしました」が適切です。
正しい使用例:許可が必要な行為
例1:「来週の会議に参加させていただきます」
解説:会議への参加は相手の許可が必要な行為であり、自分にとって恩恵があるため、「させていただく」が適切です。
例2:「日程を調整させていただきます」
解説:日程の調整には相手の了承が必要であるため、この表現が正しいと言えます。
「させていただく」の言い換え表現
「させていただく」が適切でない場合、シンプルな表現に言い換えることで文章を簡潔にできます。
例1:動詞「する」に置き換え
例:「資料を配布させていただきます」
言い換え:「資料を配布します」
解説:許可が不要な行為であるため、「する」を使うのがスマートです。
例2:謙譲語「いたします」への置き換え
例:「確認させていただきます」
言い換え:「確認いたします」
解説:確認は相手の許可が不要な行為であり、「いたします」に言い換えるとより簡潔になります。
言い換えのコツ
言い換え表現を考える際は、相手に対する敬意を損なわない範囲で、シンプルな動詞や補助動詞を選ぶと良いでしょう。必要以上に丁寧さを加えると、冗長な印象を与えかねません。
「させていただく」の乱用を避けるポイント
「させていただく」を使いすぎると、文章が回りくどくなり、かえって印象を損なう可能性があります。一文の中で複数回使用するのは避け、他の敬語表現に置き換える工夫をしましょう。
悪い例:乱用による冗長な表現
例:「本日中に確認させていただき、ご報告させていただきます」
改善:「本日中に確認し、ご報告いたします」
解説:行為の主語が同一の場合は、簡潔にまとめる方が読みやすくなります。
適切な表現の選び方
「させていただく」の代わりに、「いたします」「します」などのシンプルな表現を使用することで、文全体の簡潔さとわかりやすさを維持できます。適切な表現を選ぶためには、状況に応じた判断が必要です。
二重敬語の注意点
「させていただく」は謙譲語であるため、他の謙譲語と組み合わせると二重敬語になる恐れがあります。以下は間違った使用例とその修正案です。
間違った例:二重敬語
例:「メールを拝見させていただきました」
正しい表現:「メールを拝見いたしました」
解説:「拝見」がすでに謙譲語であるため、「させていただく」を加えると二重敬語となり不適切です。
さらに注意したい点
二重敬語を避けるには、敬語表現をひとつに絞る意識が必要です。特にビジネスメールでは、適切な敬語の選択が相手への信頼感につながります。
まとめ
「させていただく」は相手への敬意を示す便利な表現ですが、使い方には細心の注意が必要です。文化庁の条件を踏まえ、適切な場面で使用することで、ビジネスシーンにおける信頼感や丁寧さを向上させられます。また、言い換え表現を活用し、簡潔で分かりやすい文章を心がけましょう。特に、二重敬語や乱用を避け、相手に配慮したコミュニケーションを取ることが、ビジネスパーソンとしてのマナーです。
敬語は相手への尊重を表す重要なツールです。「させていただく」の正しい使い方を身につけ、誤用を避けることで、洗練された言葉遣いを実現できます。