「させていただく」の意味とは?
「させていただく」は、自分が行う行為について、相手の許可や理解があることを前提に、その行為をすることを謙虚な姿勢で伝える敬語表現です。 「〜する」や「〜します」をただ丁寧にした言い方ではなく、「〜させて」と「いただく」を組み合わせることで、「自分がその行為をするのは、相手の了解や恩恵があるからである」というニュアンスを強調します。
ビジネスの場では、何かを行う際に自分主体で進める印象を避け、相手に対する配慮や尊重を示したい場合に、この表現が使われます。 たとえば、「ご報告します」を「ご報告させていただきます」に変えることで、「自分の行動(報告すること)」は相手の理解や状況に支えられている、という謙譲的な気持ちを込められます。
なぜビジネスで「させていただく」を使うのか
相手の許可や理解を前提とするため
ビジネスでは、相手は顧客・上司・取引先などさまざまな関係者がいます。 単に「〜します」と言うと、自分主導で行為を決行する印象が出やすいですが、「〜させていただく」を使えば、「あなたの了承があり、この行為が可能になりました」という姿勢を示せます。 これは、相手を尊重する言い方であり、相手の立場や都合を無視しない柔軟な対応として評価されやすいです。
より謙虚で丁寧な印象を与えるため
「させていただく」は丁寧な敬語表現として定着しており、相手に不快感や高圧的な印象を与える可能性が低いことが特徴です。 交渉や調整が必要な場面、相手の協力を得たい場面では、「させていただく」を適切に使うことで、円滑なコミュニケーションや信頼感向上に役立ちます。
ビジネスシーンでの「させていただく」の使い方
メールや文書での表現
ビジネスメールで依頼や報告をする際、「ご連絡します」という直接的表現を「ご連絡させていただきます」に変えると、相手への敬意が強まります。 「先日ご依頼いただいた資料の送付につきまして、本日中にお送りさせていただきます。」 これにより、相手は自分の依頼や期待が尊重されていると感じ、好印象を持ちやすくなります。
口頭での連絡・報告時
対面や電話で「こちらで確認させていただきます」などと言うと、「自分が確認作業を行う」という行為が、相手の存在を前提に行われていると示せます。 「今から取引内容を再確認させていただきますので、少々お待ちいただけますでしょうか」といえば、相手への丁寧さが際立ちます。
「させていただく」を使う際の注意点
使いすぎて不自然にならないように
「させていただく」は便利な敬語表現ですが、あまりにも多用すると文章が冗長で不自然な印象を与えます。 ひとつの文中に複数回使う、またはシンプルな行為にまで無理に「させていただく」をつけるのは避けた方が良いでしょう。 必要性や相手への敬意を踏まえたうえで、バランスよく使うことが大切です。
相手との関係性や場面に合わせる
「させていただく」は非常に丁寧な表現であるため、相手がフランクな関係者や、すでに確立した深い信頼関係がある相手には、逆に重々しく感じられることもあります。 あまり格式ばらず、「〜いたします」など、もう少し軽い敬語表現に留めることで自然なコミュニケーションが可能です。
「させていただく」と「いたします」の違い
「させていただく」は相手の了承を前提
「いたします」は、単に自分が行う行為を謙譲表現で述べるだけであり、必ずしも相手の許可や恩恵を前提としていません。 一方、「させていただく」は「相手がいるからこそ自分がその行為を成し得る」という意味合いが強く、相手の許可や理解が背景にあるニュアンスを表現します。
用途とニュアンスの使い分け
「いたします」は、自分の行為を単に丁寧に表す場合に適しています。 「させていただく」は、相手の立場や理解を経て初めて行為が成り立つ場合、より相手を尊重する丁寧な表現として使われます。 状況に合わせ、どちらがより適切か判断すると良いでしょう。
類義語・言い換え表現
「させて頂く」以外の敬語表現
「させていただく」と同様に、相手への配慮を示す表現として「ご協力をお願いできますでしょうか」や「承知いたしましたので進めてまいります」が挙げられます。 こちらは行為の主体(自分)の行為を報告するというよりは、相手の協力や承諾を求める際に用いる表現です。
「ご要望に沿って対応いたします」
何らかのリクエストに従う場合、「ご要望に沿って対応いたします」は「相手の希望を踏まえ、行動する」という点で「させていただく」と近いニュアンスを持ちます。 ただし、やや中立的な表現で、相手の許諾を得て行動するイメージは「させていただく」ほど強くありません。
ビジネスで「させていただく」を活用する例
顧客とのメールやりとり
「このたびのご依頼につきまして、早速お見積りを作成させていただきます。 明日中にはメールでお送りいたしますので、何卒ご確認のほどよろしくお願いいたします。」
ここでは顧客に対し、自分が見積もりを作成する行為が顧客の要望や状況を前提としていることを、丁寧に表明しています。
上司への口頭報告
「では、その件につきましては、私が資料を整理させていただきます。 完了次第、改めてご報告いたしますので、少々お時間をいただけますでしょうか。」
上司に対して、自分が資料整理を行うと宣言する際、ただ「いたします」ではなく「させていただく」を使うことで、上司の承諾や理解があっての行動であることを示します。
使い分けのポイント
相手・状況・行為の性質を考慮する
「させていただく」は、相手からの理解や支持が必須の行為に向いています。 単純な報告であれば「いたします」、許可を求めるなら「よろしいでしょうか」、相手のリクエストに基づいた行動なら「させていただく」がバランスを保ちます。
冗長表現を避ける
一つの文章内で何度も「させていただく」を繰り返すと、読みにくくなります。 例えば、「確認させていただき、ご報告させていただき、資料をお送りさせていただきます」では、くどい印象を与えるため、いくつかの行為は「いたします」に変えるなどしてバリエーションを持たせると効果的です。
文化的背景・国際的視点
英語での対応
英語には「させていただく」に相当する表現は存在しません。 "I will" や "I would like to" といったシンプルな表現で、自分が行う行為を示します。 ただし、「相手の許諾を経て行う」というニュアンスを出したい場合は、"with your permission" や "if it's acceptable to you" を付け足すことである程度再現できます。
海外相手には明確な行動表明を優先
海外のビジネスパートナーに対しては、迂遠な表現より、行動・意思を直截に示す方が伝わりやすいです。 "Let me proceed with the plan" や "I will take care of it" など、スッキリした表現が好まれることも多いため、相手の文化や慣習を考慮して使い分けるとよいでしょう。
まとめ
「させていただく」は、相手の理解や状況を前提とした上で、自分が行う行為を丁寧かつ謙虚に表現する敬語表現です。 これを用いることで、ビジネスの場で相手との関係性を良好に保ちつつ、行動を報告・宣言することができます。
しかし、使い過ぎや場面にそぐわない用法は、文章を冗長にし不自然な印象を与える可能性があります。 適切な場面で慎重に用い、必要に応じて「いたします」や「承知いたしました」など他の表現も組み合わせ、自然な敬語表現を目指しましょう。 また、海外相手には文化的背景を踏まえ、よりストレートな英語表現で意図を伝えることが求められます。
最終的に、「させていただく」を効果的に活用することで、相手への配慮と尊重を示しながら、自らの行動方針や意思決定を明確に伝え、円滑なビジネスコミュニケーションを実現できます。