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2024.11.21 15:30

バーテンダーから起業家へ 新リキュールの世界市場攻略法

イタルスピリッツの看板リキュール「イタリカス・ロゾリオ・ディ・ベル ガモット」(中央)(Rob Kim / Getty Images for NYCWFF)

アペロールやカンパリといった定番のリキュール以外の選択肢を──。祖母のレシピを頼りにイタリア人起業家が、新たな蒸留酒づくりに挑んでいる。


ジュゼッペ・ガッロ(43)が起業を思い立ったのは、英ロンドンでバーテンダーをしていた時のことだ。「スプリッツ」と呼ばれるカクテルでは、アペロールやカンパリといった有名リキュールを使うことが多い。伊アマルフィ生まれのガッロは、祖母が来客のためにつくっていたベルガモットベースの蒸留酒を思い出し、実は忘れられてしまったリキュールがほかにもあるのではないか、と考えるようになった。
 
そこでガッロは、2016年 に飲料メーカー「ItalSpirits(イタルスピリッツ)」を創業。故郷からベルガモットや、シチリア島の柑橘類を取り寄せ、看板リキュールの「イタリカス・ロゾリオ・ディ・ベルガモット」を発表した。人工着色料を一切使用しておらず、植物性由来のアルコールはヴィーガン認定も受けている。同社の現在の売り上げは、競合他社と比較して控えめな1500万ドル程度だが、商品はすでに40カ国で販売されている。

「他社の商品を模倣するつもりはありません。目標は、オーガニックな食材を使い、歴史と文化遺産に敬意を払いつつ、現代の消費者に適した高品質で、新しい風味の商品を開発することです」(ガッロ)

イタリカスの販売価格は1本30~45ドルで、カンパリのおよそ倍だ。そのため、利益は確保できている。近年、輸送コストが上昇しているが、それでもほかの食品・飲料ブランドよりは利益率は高い。

イタルスピリッツは、飲酒やバー文化が盛んな都市から攻略するアプローチを取っている。ガッロが「シタデル方式(城塞方式)」と呼ぶこの戦略では、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、ローマを皮切りに、シドニーやサンフランシスコ、マイアミ、シンガポール、バルセロナ、パリへと順次展開していく。

この戦略には理由がある。一般的に酒類ビジネスの収益性は高いものの、消費者になじみがないリキュールで新しい市場に進出するのは容易ではないからだ。また20年には、世界的飲料メーカー「ペルノ・リカール」からの出資を受け入れている。同社は「アブソルート・ウオッカ」などのブランドを傘下に抱えており、イタルスピリッツの商品を主要市場に届けることができるためである。着実に準備を進めるガッロに、焦りの気配は感じられない。「市場が十分に成熟し、特定の製品に適した状態になるのを待ちたいのです。消費者の準備が整っていることを確認する必要があります」(ガッロ)


ジュゼッペ・ガッロ◎飲料メーカー「ItalSpirits(イタルスピリッツ)」の創業者兼CEO。その前は、英ロンドンでバーテンダーとして働く傍ら、バカルディ傘下の「マルティーニ・エ・ロッシ」のブランド・アンバサダーを務めたり、英国の人気シェフ、ジェイミー・オリバーが経営する飲食店のカクテル・プログラムを刷新したりしていた。伊アマルフィ出身。

文=クロエ・ソルヴィーノ 翻訳=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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