1989年2月創業のトーシンパートナーズは、単身者用マンション「フェニックス」の販売を皮切りに収益用不動産業に本格参入した。都心部の優良な立地を厳選し、洗練された外観とファミリー向けクラスの上質な設備を備えた住まいは、従来の単身者物件にはない希少性があるという声も多かった。
そして2013年、多様化するライフスタイルの受け皿として新ブランド「ZOOM」を世に送り出すと、高感度な若い世代を中心に反響を呼んだ。現在、東京都心部・横浜・川崎エリアを中心に80棟を供給するまでに拡充し、14年度から11年連続でグッドデザイン賞を受賞するほか、German Design AwardやAsia Pacific Property Awardsといった海外の建築賞にも輝くブランドになった。
時代に磨かれたトーシンパートナーズの「ミッション」
不動産市場では過去35年の間に2度の大きな危機を経験している。1989年のバブル崩壊と2008年のリーマンショックだ。とりわけバブル崩壊は不動産投資の過熱が引き金となり、金融引き締め政策などの規制が敷かれたことで市場から撤退する同業者も少なくなかった。「その情勢下でトーシンパートナーズが事業を存続できたのは、目指す姿への意識を強くもち続けることができたからです」と、代表取締役社長の千代谷直之(写真。以下、千代谷)は話す。
地元で不動産経営をしている親戚が多いなか、次第に不動産投資に興味を抱くようになり、「この価値を多くの人に伝えたい」と、現在のトーシンパートナーズに入社。営業職に就いて1年後にバブルがはじけた。
「当社は創業時から、相手と共に発展し、その活動によって社会もまた栄えていく『共存共栄』を経営理念に掲げていました。企画開発から販売、管理までを一気通貫で行う事業スタイルにおいては社会に供給する建築にも責任をもたねばなりません。生産性を重視する一方で、実力を備えた物件だけが厳しい時代を生き抜けると信じ、コスト削減のなかでいかに魅力を付加するかに最大限の努力を払っていました」
不況のなかで「いつかは都市がいきいきと輝き出すカッコいい建築をつくり、入居者様とオーナー様それぞれに喜びを提供したい」という気持ちが消えることは片時もなかったという。その後、リーマンショックから数年を経て、千代谷が開発事業部と賃貸・管理部を管掌することになったのを機に、同社は新たなミッションを打ち出す。
「不動産の新たな価値を創造し、一人ひとりの豊かな暮らしと、活力ある社会を実現する」。このフレーズには、時代に磨かれた揺るぎない決意が込められている。
自分が住みたい物件を心と技を尽くしてつくり続ける
ミッション実現に向け、同社はどのような物件を開発しているのだろうか。千代谷は、海外の賞に輝くなどデザイン性も高く評価されるZOOMを例に取り説明してくれた。まず不動産投資の要となる立地については、都市部の最寄り駅から徒歩10分圏内という立地条件にこだわり、リサーチを徹底したうえで長く需要の見込める場所を選定。リサーチのために、地場の不動産会社を歩き回ることもあった。一方、住居においては3つの価値を追求する。
ひとつ目は、SAFETY(安全で、安心する)。強度の高い建物構造に加え、オートロックの標準仕様やホームセキュリティシステムなどを充実させ、安心して自分らしくリラックスできる住環境を目指す。
ふたつ目は、SENSE(センスが刺激される)。その土地の記憶や普遍的な美しさをファサードや住空間に宿らせ、ステータスや誇りを感じる住まいとする。
そして3つ目が、PRACTICAL(実用的で使いやすい)。ユーザー目線を意識した設計により、機能とデザインの両立をかなえる。
「3つの価値を融合させつつ、最後は『自分自身が住みたいと思えること』が価値基準になる」と千代谷は開発の秘訣を明かす。
例えば、2023年グッドデザイン賞を受賞した「ZOOM神宮前」。街に大きく開いたコモンライブラリーと21タイプ68住戸を巧みに配した、複雑かつ端正なファサードに心が奪われる。さらに1階の一画は半地下風のロフト付き住戸にして、プレミア感を高めている。
「開発段階からワクワク感が止まらなかったです。完成して室内に立ったとき、カッコいい、この部屋モテるだろうな〜と。建築は心と技を尽くすことで私たちに応えてくれますが、豊かな発想で丁寧につくり込むことの大切さをあらためて実感しましたね」
車を愛し、色のニュアンスひとつとってもこだわり抜き、手をかけ、佇まいと乗り味を楽しむ。千代谷のこうした人生を楽しむ美学が同社の物件開発にも息づいている。
オーナーも入居者も満足する本物のトップブランドを目指す
アフターサービスの充実はトーシンパートナーズの物件のもうひとつの魅力だろう。末長く顧客と付き合うことになる不動産投資ビジネスでは、契約後の修理やメンテナンスを含めたフォローをどの程度実施するかは企業ごとに異なるが、「私たちが何を実現し、そのために何をしなければいけないかを考えれば答えは明白だ」と千代谷は力を込める。オーナーと入居者それぞれに住まいのサポートサービスを提供するほか、20年にはスマートフォン用アプリ「LENZ(レンズ)」を自社開発でリリース。これにより、オーナーは賃貸入出金管理や収支管理、書類の確認ができるほか、チャット機能を活用して相談も可能に。一方、入居者は住むだけでたまるポイントを享受でき、更新料の支払いに使うこともできる。メインターゲットが20代〜30代のビジネスパーソンということもあり、チャット機能は想像以上に活用されているという。パートナーシップを強化するツールとしてさらにアップデートを図る考えだ。
トーシンパートナーズでは近年、「家賃債務保証」「賃貸仲介」「不動産テック開発」を担う事業会社を傘下に収め、トーシンパートナーズホールディングスを持ち株会社とする経営体制へ移行した。強靭な企業体制を育むと同時に、千代谷は、供給する物件とオーナーが受け取るサービス、そして入居者の満足感、それらすべての質を高め、今後5年間で収益用不動産のトップブランドになることを目指すと断言する。「売却益を期待したバブル期とは異なり、今はインカムゲインを重視する投資スタイルに移行しています。この時代を前へ進めるためにも、不動産の素晴らしさを伝える集団であり続けたいと思います」
最後に千代谷は、建築が人に与える力についてこう付け加えた。「ワクワクさせ、時に勇気づけ、時に包み込む。そこに住むことで与えられる刺激がモチベーションにつながったとき、未来は能動的に動き出すと信じています」
※当記事は、特定の投資商品について情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また当記事に記載のある商品への投資の推奨および将来の価格などの上昇・下落を示唆するものではありません。
※この情報は2024年11月25日時点のものです。
トーシンパートナーズ
https://www.tohshin.co.jp
ちよや・なおゆき◎トーシンパートナーズ代表取締役社長。1990年入社。2000年に取締役に就任。営業部門責任者を経て、11年より仕入開発部門、15年より賃貸・建物管理部門を管掌。19年から現職。