ドナルド・トランプは11月5日に行われた大統領選の選挙期間中、再選された場合に恩赦を与える可能性がある何人かについて、何度か発言している。
それは、いわば自らの支持基盤に対する求愛であり、腐敗していると主張してきた米国の司法制度の擁護であり、さらには自身に忠誠心を示した者たちに報いることでもあったといえる。
トランプは、2021年1月6日に起きた議事襲撃事件で有罪判決を受けた者への恩赦について繰り返しコメントしているが、この事件で起訴されているのは1500人以上。そのうちの誰を対象にするつもりかは不明だ。
そのほか、2期目で恩赦の対象となる可能性があるのは今のところ、1期目に新設した国家通商会議(現・通商製造業政策局)のトップに選んだピーター・ナバロのほか、以下の3人とされている。
・ロス・ウルブリヒト(ダークネット・マーケットの創設者)
闇サイト「シルクロード」の創設と運営により、
2015年に終身刑を言い渡された。ウルブリヒトの支持者は選挙結果を受け、「1月、ロスが家に帰る」とX(旧ツイッター)に投稿。2024年5月に参加したリバタリアン党全国大会で、就任初日にロス・ウルブリヒトの「減刑を認める」と約束したトランプへの感謝の言葉を述べている(ただし、恩赦と減刑は必ずしも同一ではない)。
・ハンター・バイデン(バイデン大統領の次男)
銃の不法購入と所持、税法違反で6月に有罪判決を受けた。量刑は12月に言い渡される予定。トランプは10月に出演したラジオ番組で、自身は司法省から不当に訴追されたものの、「モラルの基準が高い」ことから、「彼らが自分にしたことはさておき」、バイデン大統領の息子への恩赦も検討すると発言した。
・ジュリアン・アサンジ(ウィキリークス創設者)
トランプは5月、ポッドキャスト番組「
TimcastIRL」に出演。ホストのティム・プールに対し、アサンジの恩赦について「真剣に検討する」と語った。アサンジは米政府との司法取引に応じ、軍事機密を公開した罪を認めている。
大統領は自らを赦免できる?
トランプのほかに、有罪判決を受けた後に大統領に選出された者はいない。そのため、大統領が自らに恩赦を与えることの合法性は明確さに乏しく、合憲性についての法学者の意見は割れている。