2024年版「脱炭素経営ランキング」第3位に輝いたのは、2023年12月期連結決算で売上収益、事業利益ともに過去最高を記録したアサヒグループホールディングス。「サステナビリティと経営の統合」を推進し、インパクトの可視化に挑むリーダーの素顔に迫る。
──勝木社長が考える「いい会社」とは。
勝木敦志(以下、勝木):私どもは自然の恵みを享受して事業を営んでいる。環境や社会が持続可能でないと存続すらできない。
私が目指しているのはサステナビリティと経営の統合だ。これは単なるスローガンで終わってはいけない。そこで、我々のサステナビリティ活動の事業インパクトと社会インパクトの可視化に本格的に取り組んでいる。社会課題の解決を収益源にできるようになれば、自信をもって「私どもはいい会社だ」と言い切ることができる。
──現時点における可視化の事例は。
勝木:事業インパクトについては、例えば「ラベルレス商品」によってCO2の排出量を削減することが顧客満足度や製品のブランド価値などにどう影響し、売り上げと利益にどう貢献するのかを定量的に把握している。社会インパクトは「インパクト加重会計」を用いて定量化している。
例えば、2023年にビール酵母細胞壁由来の農業資材の活用が社会に与えるインパクトを試算した。ビールの製造工程で発生するビール酵母細胞壁を農業資材に活用すると農産物の発育が良くなる。そこで、収穫量の増加割合金額と肥料や農薬削減によるCO2の削減額を算出したところ、野菜・畑作では収穫量が1.21倍、社会インパクト金額は64.9億円という結果になった。
──国内外でサステナビリティへの好事例が生まれている。
勝木:オランダでGrolschを製造する工場ではバイオマス発電で電気や熱、蒸気を供給するTwence Holding社とカーボンニュートラルな醸造所の実現に取り組んおり、これらグリーン熱を洗瓶機や殺菌機、建物の暖房に利用することで19年の天然ガス使用時に比べてCO2の排出量を年間72%も削減できた。
日本国内では、23年6月から自動販売機の庫内にCO2を吸収する特殊材を搭載した「CO2を食べる自販機」を展開している。CO2を吸収した特殊材は肥料やコンクリートなどに活用し、脱炭素社会の実現に貢献している。アサヒビールの茨城工場では、工場の排水由来のバイオメタンガスを利用した燃料電池による発電の実証事業も手掛けている。