この研究の筆頭著者で、UCL(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)の外科・低侵襲医療学部およびスポーツ・運動・健康研究所のジョー・ブロジェットは、プレスリリースで次のように述べている。「各自の身体能力に関係なく、それほど時間がかからずに血圧を改善する効果があるということは良いニュースである」
「あまり運動をしない人にとって、ウォーキングは確かに血圧に良い効果をもたらす効果がある。しかし、血圧を改善したいなら、運動によって心臓血管系により負荷を掛けるようにすると、最も大きな効果があるだろう」とブロジェットは続けている。
この研究者たちは、5カ国に住む1万4761人のボランティアが、運動や歩行時に装着する活動量計から集計した健康データを調査。被験者の日常的な活動を「座っている」「眠っている」「ゆっくり歩いている」「速く歩いている」「立っている」「激しい運動をしている」という6つのカテゴリーに分類した。
研究者たちは、激しい運動に取り組むことと並んで、睡眠時間の改善や歩いたり立っている時間を増やすことも、血圧レベルを下げるために意義ある一助となり得ることを発見した。
「運動による効果のほかに、座りっぱなしで体を動かさない時間を、立ったりゆっくり歩いたりする時間に大幅に置き換える(それぞれ1日あたり78分間と95分間)ことが、拡張期血圧(心臓の弛緩中に記録される圧力)に臨床的な意義ある変化を見て取れるようになるためには必要だった」と研究者たちは記している。
「より長時間の睡眠が血圧を下げるために有益であることは、睡眠中の回復過程に関連している可能性がある。睡眠中は交感神経の活動が低下する。例えば、夜間の血圧低下は通常の生理学的現象であり、覚醒時と比較して一般的に血圧は10〜20%低下する。慢性的な睡眠不足が続くと、心臓血管系への負担が増え、血管収縮の増加や、交感神経系の活動の高まりから、全身性動脈高血圧症を引き起こすおそれがある」
「我々の研究でモデルにした運動的活動には、ランニング、サイクリング、傾斜のある場所でのウォーキングなどの活動が含まれるが、計画された意図的な運動と、バスに乗り遅れないように走ったり階段を上ったりといった日常生活に付随的な活動の両方を含む可能性がある」と研究者たちは付け加えている。
「運動の有益性は知られているにもかかわらず、計画的な運動時間への参加率は依然として低いままである。その理由は、多くの中高年層にとって、実行可能性が乏しく意欲が湧かないためだ。運動的活動を毎日5分間ほど増やすように生活を変えることは、日常的な習慣や活動に難なく組み込める現実的な行動変化となる」。
世界の人口の約26%にあたる9億7200万人が高血圧に苦しんでいる。今後は発展途上国で高血圧になる人が増えることから、2025年までに高血圧の有病率は29%に上昇することが予想される。診断や治療をせずに高血圧を放置すれば、脳卒中や心臓病のリスクが著しく高まるおそれがある。
(forbes.com 原文)