血中アルコール濃度は、人の血液中に含まれるアルコールの割合を示す数値だ。運転手の血液中に含まれるアルコールの量が増えるほど事故の危険性が高まるため、重要な基準とされている。
現行のスペインの規制では、一般の運転手の血中アルコール濃度の上限は、他の多くの欧州諸国と同様、0.05%とされている。ただし、業務上の運転手と初心者に関しては0.03%、18歳未満はゼロとされている。
同国政府は来年から、一般の運転手の血中アルコール濃度の上限を、現行の0.05%から0.02%に引き下げる。ベルギーの首都ブリュッセルに本部を置く欧州交通安全評議会(ETSC)によると、この数値は、欧州で最も厳しいアルコール基準値を設けているノルウェーやスウェーデンと同じ水準になるという。スペインの新たな法定基準値は、事実上、運転前に一切飲酒できないほどの量となる。
英国では、一般の運転手のアルコール基準値は0.08%だが、チェコやルーマニア、ハンガリーといった東欧諸国では、許容範囲がゼロとされている。
ETSCのアントニオ・アベノソ事務局長は、飲酒運転を撲滅する上では「運転前にアルコールを飲んではいけない」という極めて単純な警告が最も効果的だと説明。その上で、スペイン政府が打ち出した新たなアルコール規制により、同国は欧州で指導的な役割を果たすことになると評価し、規制が適切に施行されれば多くの命が救われるだろうと述べた。
一般に、米国では運転中の血中アルコール濃度の法定基準値が欧州の水準より高い傾向にある。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)によると、運転中の血中アルコール濃度の基準値が0.05%であるユタ州を除けば、米国の各州では0.08%かそれ以上に設定されている。
こうした基準の甘さにより、米国では飲酒運転による死亡事故が後を絶たない。NHTSAによれば、米国では毎日約37人が飲酒運転による交通事故で死亡しているが、これは39分に1人のペースとなる。2022年の飲酒運転による交通事故の死者数は1万3524人に上った。
先述のETSCによると、スペインは今後予定されている血中アルコール濃度の法定基準値の引き下げだけでなく、運転手の呼気から基準値を超えたアルコールが検知されると自動車のエンジンがかからなくなる安全装置「アルコール・インターロック」の推進でも主導的な役割を果たしている。スペインでは大型バスだけでなく、8人乗り以上のマイクロバスの新車にもアルコール・インターロックの装着が義務付けられている。運転手は走行前に装置に息を吹きかけ、アルコールが基準値以下であることを確認しなければならない。
ETSCのアベノソ事務局長は次のように指摘した。「子どもたちがバスで遠足に行く時や、毎日バスで通学する時、運転手が飲酒していないことが分かれば安心できる。これは欧州のすべての親が持つべき権利であり、バスの乗客全員が持つべき権利でもある。スペインだけでなく、欧州のすべての国で同様の措置が取られることが望ましい。また、大型貨物車にもこの装置を装備すべきだ。大型トラックが関与する衝突事故は、悲惨な結果を招くことが多いからだ」
欧州各国の血中アルコール濃度の基準値
欧州と米国の飲酒運転の状況
(forbes.com 原文)