このウイスキーブランドは、今年11月より「“Crierball(クライヤーボール)」と名付けられた限定版ウイスキーを製造することによって、フットボールの試合日の祝祭を新たな次元に引き上げようとしている。フットボールシーズンにおける感情の起伏から着想を得たこの新製品のウイスキーには、ユニークな材料が一つ、注入される。それは負けたチームのファンが流した涙だ。ファイヤーボールが「塩辛いシナモン風味」と呼ぶこのブレンドは、今シーズンの試合で涙を集め、来シーズンの開幕に合わせてウイスキーとして発売する計画になっている。その蒸留には何カ月も時間がかかるため、発売は1年後になるようだ。
ファイヤーボールは、全米各地で行われる主要なプロおよび大学チームによるライバル同士の試合で涙を集める予定だ。各試合の終了後、ファイヤーボールの「涙収集者」が無菌の密閉容器を携えてスタジアムの外で待機し、試合後の悲しみのエキスを採取する準備を整える。採取された涙は安全な施設に運ばれ、「何カ月もかけて入念に殺菌と蒸留」が行われ、クライヤーボール・ウイスキーの主原料に変貌する。
ファイヤーボールが涙を採取する試合は以下のとおり。
11月2日:フロリダ・ゲーターズ対ジョージア・ブルドッグス(ジョージア州アセンズ)
11月10日:フィラデルフィア・イーグルス対ダラス・カウボーイズ(テキサス州ダラス)
11月17日:グリーンベイ・パッカーズ対シカゴ・ベアーズ(イリノイ州シカゴ)
11月17日:ボルティモア・レイブンズ対ピッツバーグ・スティーラーズ(ペンシルベニア州ピッツバーグ)
11月30日:オーバーン・タイガース対アラバマ・クリムゾン・タイド(アラバマ州タスカルーサ)
11月30日:ミシガン・ウルヴァリンズ対オハイオステート・バックアイズ(オハイオ州コロンバス)
「私たちは競争精神を全面的に尊重していますが、それをもう少し刺激的に表現できないかと考えました」と、ファイヤーボールのグローバルブランドディレクターを務めるダニー・スイチは語る。「フットボールにおいて、勝利の味に勝るものはありません。特にライバルを打ち負かしたときの味は格別です。クライヤーボールで、来シーズンにはファンの方々にその感覚を堪能してもらいたい。その過程で、少しばかり自慢する権利も得られるかも知れません」。
ファンが提供できる涙に限界はない。今、特に悲しい日を過ごしている人はウイスキー産業で大いに活躍できる機会かもしれない。
結局のところ、これは新しい表現というよりも宣伝活動に近いものだ。実際に製造されたクライヤーボールを目にすることはあるかも知れないが、近所の酒屋の棚に並ぶのを見ることはおそらくないだろう。もっとも、これらの試合で膨大な量の涙が流さるようなことがあれば話は別だが。