ヘルスケア

2024.11.09 10:00

英国、ゲノム解析に基づく「世界初」のパンデミック警戒システムを導入へ

「歴史を繰り返してはならない」

ウェス・ストリーティング保健・社会福祉担当相は、コロナ禍で国民保健サービス(NHS)は「比較可能な他国の医療制度よりも深刻な打撃を受けた」としたうえで、「歴史を繰り返してはならない」と強調した。

英国政府の計画では、NHSの希少疾患患者と家族、がん患者の全ゲノム配列を解析しデータベース化を進めている国営企業ゲノミクス・イングランドや、英国内の患者の血液や組織などの生体試料と臨床情報を収集・保管しているUKバイオバンクなど、複数の政府機関がオックスフォード・ナノポアと正式に提携し、同社の技術を複数のヘルスケア分野に適用する。

「この歴史的な提携により、世界をリードする英国の科学者たちが、新たな脅威に関する最新情報をいつでも入手できるようになる」とストリーティングは語っている。

パンデミック対策だけではない

英国政府は、既存の薬が効かない薬剤耐性菌や癌も、この提携の主要な対象として見据えている。高齢化に伴って癌医療の需要増が見込まれる中、英国の国立病院ではすでに患者の増加に対応しきれずにいる。

ゲノミクス・イングランドは、オックスフォード・ナノポアの技術を活用して癌についての知見を深め、癌リスクを高めるおそれのあるゲノム変異の特定を目指す。こうした変異の中には治療可能なものもあり、癌の症例の一部は予防できる可能性がある。

オックスフォード大学発のスピンオフ企業であるオックスフォード・ナノポアのゴードン・サンゲラCEOは、同社独自のDNA/RNAシーケンシング技術が、癌、遺伝性疾患、感染症の患者の治療成績の改善に役立つと考えている。

同社の技術は長鎖配列解析が可能で、DNAやRNAを小さな断片に分割する必要がなく、患者のサンプルからゲノム情報を抽出するプロセスを高速化できる。その結果、ゲノム情報を利用した最適な治療法を、医師が迅速に選択可能になる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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