中国人民解放軍海軍の広報部門はソーシャルメディアへの投稿で、艦船に乗り込んでいる隊員らに、これらのアプリを使用して個人情報を暴露したり、その他の秘密をうかつに漏らしたりしないよう警告した。
「昨今、デートアプリが続々と登場している。恋愛に熱心な若い将校や兵士は注意を引くために軍人であることを暴露する可能性があり、犯罪のターゲットになりやすい」と注意を喚起した。
海軍はまた、中国では違法となっているオンラインギャンブルの危険性を警告し、ギャンブル中毒を「悪魔にとりつかれること」に例え、深刻な経済的破綻につながる可能性があると戒めた。
監視社会でのオンラインデート
統計プラットフォームStatista(スタティスタ)の2022年6月のデータによると、中国では約3350万人がオンラインデートやマッチングアプリを日頃から使っている。そうした数は全人口からするとほんの一部だが、投資家らは53億ドル(約8090億円)以上をオンラインデートやソーシャルメディアのアプリを制作する会社に注いでおり、市場は2億9650万ドル(約450億円)に達すると予想された。オンラインデートアプリは中国ではまだ比較的新しいが、新型コロナが大流行した際に都市封鎖されたため、急激に利用が増えた。特に人気があるのは「カジュアルなデートアプリ」だ。
中国当局は、秘密が流出する可能性があることを懸念しているようだ。「インターネット世代」として知られる中国のZ世代は、インターネットやデジタル機器が身の回りにある環境で生まれ育ったかもしれないが、その多くは現在増えつつあるネット上でのなりすましやその他の詐欺にうとい。
また、Tinderのような外国のマッチングアプリは中国本土ではブロックされているが、人々はVPN経由でアクセスすることができる。ギャンブルアプリも同様で、人気を博している。そのため、オンラインで詐欺を働く者にもチャンスが広がっている。
「軍によって管理・制御されていないアプリを軍人が使用することはリスクだ」と、テック業界に特化した調査会社Enderle Group(エンダール・グループ)のアナリストのロブ・エンダールは説明する。
米軍が中国企業を親会社に持つTikTokのアプリを貸与デバイスで使用することを禁止し、すべての基地や施設でのTikTokアプリ使用を全面的に禁じているのはこのためだ。
「アプリは大量の情報を取得する。特に無料アプリではユーザーの位置情報や個人情報、関心事、弱み、オンラインかどうかを判断するのに情報が使われるかもしれない」とエンダールは警告する。
このような情報は、敵対勢力にとって非常に重要なものとなり得る。敵対勢力は情報を元に軍人に危害を加える、艦隊の動きを知らせる(港にいる場合、あるいは携帯電話を使って地理的位置を特定する場合)、足がかりを築く、ユーザーを直接操作する、といったことができるかもしれないとエンダールは指摘する。「こうした行為はいずれも軍事作戦の足を引っ張る」