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2024.11.08 18:45

ヴィンテージ・パソコンを「美学」で再評価する本 刊行の狙いを著者に聞いた

かつて黎明期のパーソナル・コンピューター(パソコン)に憧れを抱いた人にとっては、グッとくること間違いなしの書籍が刊行された。

それが、1970~80年代に登場した多種多様なデザインのパソコンを収録した『コンピュータ ノスタルジア』(長澤均、テクノタク飯塚・著/standards刊)だ。

本書は「海外」「国内」「Apple」の3章に分けられていて、「コンピューターで何ができるのか?」がまだ明確には見えていなかった時代に発売された個性豊かな名機たちについて、詳細な解説文とカラー写真を掲載。巻末には、パーソナル・コンピューター誕生までの歴史が大まかに把握できる「コンピュータの文化史」も収められている。

本書は、ヴィンテージ・パソコンを扱った本では珍しく、電卓についてもデザイン重視でセレクトし掲載している。

本書は、ヴィンテージ・パソコンを扱った本では珍しく、電卓についてもデザイン重視でセレクトし掲載している。

著者の一人である長澤均さんが、最初にパソコンを購入したのは1980年代末。その後、本書にも収められているヴィンテージ・パソコンの収集を続けてきたのだという。

「きっかけは、1990年代に秋葉原のあるショップに展示されていた『Macintosh Plus』を見て、その愛らしいデザインにハマったこと。以降、海外製は『PET 2001』を筆頭に10数台、国内製が10数台、Apple製品で10数台といった感じで、45台のヴィンテージ・パソコンを収集してきました。ただ、本体のみならずモニターとかデータレコーダーも同じ製品で揃えるタイプだったので、あまりに保管場所を食ってしまい、2000年代になって多くは手放してしまいました。

パソコンの使用用途は、ほとんどがゲーム。購入の判断基準になったのは、スペックも多少はありましたが、基本は“デザインが好きかどうか”でした。収集してきた中でも、日本の『X68000』などは何度も買い換えたりして最強の1台にしたほどですが、すべてデザインが好きだったからです」(長澤さん)

服飾史家でグラフィックデザイナーでもある長澤さんのこうした嗜好は、本書のコンセプトにも色濃く反映されている。

「本書のコンセプトは『“美学”によってヴィンテージ・パソコンを再評価する』というものです。僕は服飾史が専門で、すべての本で“美学”的なことは語ってきたので、同じような視点をヴィンテージ・パソコンにも持ち込んでみたのです。

これまでのヴィンテージ・パソコンに関する本は、すべてテック系視点で書かれていて、しかも当時の隆盛を知っている人たちによるものばかりです。それとはまったく違う感性でパソコンを捉えた本は、1970~80年代当時のことを知らない世代、まだ生まれていなかった世代にも訴えるところがあるはず。デザインという視点からなら、古いコンピューターに興味を持ってもらえるのではないかと思ったのです」(長澤さん)


長澤さんは現在、所有するヴィンテージ・パソコンを事務所(兼・古書店)に飾っているが、ここを訪れる20~30代の女性が「可愛い~」などと言いながら写真を撮っていくのだそう。「僕自身の感性は元々かなり女性的」という長澤さんのこだわりが詰まった本書は、コンピューターにそれほど興味がない女性にとっても気軽に楽しめる一冊となっているはずだ。

『コンピュータ ノスタルジア』(長澤均、テクノタク飯塚・著/standards刊)
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文 = 加藤肇

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