創業以来、「男性によるプロフェッショナルな生命保険営業」で業界をけん引してきたプルデンシャル生命。しかし、徐々に多様性のある組織への移行を始め、2021年に当時の代表取締役による「女性活躍推進宣言」で大きく前進。現在女性ライフプランナー・営業管理職数は480人以上となった。
その変革の土壌になったのが制度とカルチャーだ。同社執行役員常務の石毛武志(上写真右。以下、石毛)は、時代とともに変化してきた同社の企業風土を次のように話す。
「当社は創業以来“Free to Work=時間や場所に縛られずに、働くスタイルは自分できめる”という文化のもとに就業環境をつくってきました。男性ライフプランナーの多くはこれを“時間の制約なく働ける”と受け止めてきたのですが、好きな時間・場所で働ける環境はさまざまなライフイベントを迎える可能性がある女性ライフプランナーとの親和性が非常に高いと気づきました。これが当社のDE&Iの実現に向けた大きな推進力になっているのです」
同社の自律的な働き方を支えるのは就業環境だけではない。ノルマがなく、顧客とのアポイントを入れるかも自分次第。顧客への貢献が報酬となる、“C=C(貢献/contribution = 報酬/compensation)”の考え方に基づく、「フルコミッション制(完全歩合制)」となっている。つまり、働き方も報酬も自分次第という「究極の自律的な働き方」が、企業風土と制度の両輪でライフプランナーに提供されているのだ。
実際に、子育てや介護を含めたさまざまなライフステージにいるライフプランナーに、この環境が支持されているという。
子育て中の社員が実感する“Free to Work”な環境のメリット
こうした就業環境下で子育てと仕事の両立を図っているのが、ライフプランナーの今村陽(上写真中。以下、今村)と宇野拓水(上写真左。以下、宇野)だ。二児の母親でもある今村は、前職でジュエリー販売員として百貨店に勤務していた。当時は、常に店舗に立つ販売職の仕事と、子育てとの両立に悩んでいた。さらにはコロナ禍で子どもを預けていた保育園が長期休園となり、退職。1年間の専業主婦を経て、21年6月にプルデンシャル生命に入社した。
転職の決め手は、“Free to Work”な環境。仕事の時間を自分でコントロールできるため、平日の幼稚園行事にも参加でき、子どもの成長を見守りながら働けるようになった。
「ライフプランナーになったことで、仕事を通して評価を得たいという願いも満たされました。加えて、経済的にも自立したことで、子どもの教育機関などの選択肢も広がりました。生命保険の専門家を名乗るための研さんや努力は大変ですが、自分のがんばりが報酬となり、子どもの人生に直接還元できることが、働くモチベーションにもなっています」(今村)
宇野は、広島県の銀行で優秀な営業成績を収め、16年4月にプルデンシャル生命に入社。1年目は妻に家庭を任せて仕事にまい進し、社内表彰されるといった華々しいスタートを切った。しかし、妻の夢もかなえるために就業時間を調整し、子どもたちの登下校の送迎や食事の準備など家事・育児を担うように。一級建築士試験に合格した妻は、現在経営者としても活躍しているため、宇野は引き続き“Free to Work”な環境を生かし、公私のバランスをとりながら業務に従事している。
こうした家族単位でのライフスタイルの変化を実現できたのは、同社のフェアでフラットな組織風土があるからだ。日本でいまだに男性の育児参加や育休取得率が伸び悩むのは、上長や人事への見え方や、評価への影響が関係しているとの分析も多い。プルデンシャル生命には年功序列の昇格や昇給、人事評価はなく、前述のC=Cの考えのもと、報酬はフルコミッション制が採られている。
「前職では上長からの評価が昇進に直結するため、同僚もライバルだとみなしていました。同僚の成績が落ち込めば、どこかで喜んでいる自分もいたのです。そんな自分を“卑しい人間だ”と責める気持ちも生まれ、転職を決意しました。仕事が好きですし、専門性を極めたいという思いもあります。効率的に仕事をすることでパフォーマンスも上がりますし、同時に自律的かつ向上心をもって成績を上げている仲間のこともリスペクトしています」(宇野)
専門性を磨きながらキャリアプランを自分でコントロール
プルデンシャル生命のライフプランナーが顧客に提案するのは、ニードセールス(顧客の潜在的なニードを詳細なヒアリングのもとに顕在化させるという考え方)に基づいたオーダーメイドの生命保険だ。士業、営業職などさまざまな業界から転職した人が「仲間」となり、顧客からの相談において、前職で得た知識を互いにシェアする。そうすることで顧客からの信頼を積み重ねていく。
オーダーメイド型の生命保険という無形商材において、顧客に最適なプランを提案するためには、常にベストを目指して学び続ける姿勢が必要だ。
今村は、通常業務と並行し、遺産相続に関するサポートを専門領域とすべく勉強中。宇野も、個人顧客から法人顧客へと専門領域をスライドするなど、常に努力と工夫を怠らない。
「自律的な働き方ができる一方で、ライフプランナーの仕事は決して簡単なものではありません。だからこそ、社の表彰式では、初めて表彰された人よりも、何十年ぶりかに表彰された人への拍手がいちばん大きいのです。ライフプランナーを続けることの厳しさや、成績を復調させることがどれほど大変なことかを全員が理解しているからこそ、仲間への尊敬の念が生まれるのです」(宇野)
子育てがひと段落した後のキャリアについてもそれぞれ「管理職を目指す」(今村)、「より仕事に比重を置き、幅を広げたい」(宇野)と目標を掲げる。
一言に「子育て世代」といっても、子どもの成長によって働き方の選択肢は増えてくる。細やかなライフステージの変化に合わせて、自分でキャリアプランをコントロールできるのも、自律的な働き方がベースにあるからだろう。
子育てに限らず、介護や家族の問題など、人生にはさまざまなライフイベントが発生する。自律性を促す企業風土があるからこそ、ライフプランナーがどのようなライフステージの変化においても仕事をあきらめることなく、継続しやすい。
「特にライフプランナーは、お客様の信頼を積み重ねることで成果の上がる仕事。つまり、長く働くことでより価値の上がる仕事でもあります。そうした将来の活躍を見据えて社員を支援するために、我々は“多彩で多才”な人が活躍できる環境を整えています。なぜなら、多様性の実現こそが企業として生き抜くための戦略になるからです。人的戦略はビジネスにおける最も効果的な投資です。優秀な人材がパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが経営層の責務と考え、一歩ずつ実現していきたいと考えています」(石毛)
プルデンシャル生命保険
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いしげ・たけし◎執行役員常務 第一営業本部長。1999年入社。ライフプランナー、営業所長、支社長を経て、営業本部長に就任。2021年執行役員に就任、24年より現職。
いまむら・みなみ◎岡山支社ライフプランナー。関東の大学を卒業後、地元である岡山県で就職。結婚、出産、専業主婦を経てプルデンシャル生命へ入社。入社以来3年連続で社内表彰。
うの・たくみ◎広島第三支社 ライフプランナー。山梨県の大学を卒業後、広島県の銀行で7年間勤務した後、プルデンシャル生命へ入社。入社以来8年連続で社内表彰。