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そのことはまず、ウォルターが収監されている死刑囚監房をブライアンが初めて訪れる場面で描かれる。「本当に弁護士か?」と訝ってみせる若い白人の職員は、ブライアンの訪問があらかじめ許可されていたにもかかわらず、わざわざ「身体検査」と称して裸になれと命じる。人権を無視したあまりの対応に、屈辱感を滲ませながら黙って従うブライアン。
さらに、捜査や判決への疑義を述べるブライアンを、検事チャップマンが上から目線であしらった後の場面。怒りを抑えて帰ろうとするブライアンに、チャップマンが「せっかく来たんだから『アラバマ物語』の博物館に寄ったらいい」などと”助言”するのが何とも皮肉だ。
『アラバマ物語』(1962)は、1930年代の南部で無実の罪を着せられた黒人を救うため、激しい人種差別と闘った弁護士の姿を子供の目線から描いた名作である。いまだ人種差別の色濃く残る町で杜撰な捜査を行い、黒人を殺人犯だと断じた検事には、恥ずかしくて口に出来ないタイトルのはずだが、本人はそれに気づいていない。
アメリカ社会が生み出し見捨てた死刑囚
このような監房の若い職員やチャップマンが、最終的に当初とは異なる態度を見せる後半から終盤のシーンは、見どころの一つだ。ドラマはウォルターの再審の行方を中心に展開されるが、サイドストーリーとして、同じ死刑囚監房に収監されているハーブという黒人にも焦点を当てている。
ベトナム戦争の帰還兵である彼は精神を病んでいたが軍から治療を受けさせてもらえず、心神耗弱の状態で人を死なせてしまった。日々激しい後悔と恐怖のため悪夢にうなされるハーブを、ウォルターともう一人の死刑囚レイは壁越しに励ましている。ブライアンはハーブの死刑執行差し止めを求めるが却下され、とうとうその日はやって来る。
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