2024年版「ステークホルダー資本主義ランキング」第8位に選ばれたのはZOZO。コロナ禍で直面したのは、急増するブランドからの「SOS」だった。澤田宏太郎が語る、ZOZOがファッション業界のインフラとして果たすべき役割とは。
澤田宏太郎がステークホルダーに対するZOZOの影響力を実感したのはコロナ禍だった。人々が外出しなくなり、アパレルブランドはリアル店舗で服を売ることができなくなった。ZOZOのもとにはブランドからのSOSが殺到。澤田は当時をこう振り返る。「応援したくて、『私たちも頑張ります』とお返事しました。結果的にモノが集まり過ぎて物流がパンクしかけて、大変な思いをしました。でも、あらためてZOZOはファッション業界のインフラであり、影響力が大きいと痛感しました」
このとき救われたのは取引先だけではない。同社はコロナ禍にZOZOTOWN上で顧客への感謝の気持ちを掲載し、さらに顧客からのメッセージも集めた。すると、顧客から感謝の言葉や応援の声が続々と寄せられたという。
「私たちはモノをつくっているわけではなく、ブランドと消費者をつなぐことをメインにずっとやってきました。自分たちはステークホルダーをつなぐハブであり、そこに上下はない」
ステークホルダーとして、株主の存在も忘れてはならない。ZOZOは株主還元に積極的で、連結配当性向は70.2%(2024年3月期)と高水準だ。
ZOZOらしさはIRにもよく表れている。22年3月期の決算資料にはマンガを使った。登場するのは架空のキャラクター「栗太郎」。公式には明らかにされていないが、作中での言動や髪型から澤田がモデルであることがうかがえる。マンガでは栗太郎や社員たちの交流がゆるいタッチで描かれるほか、グラフなどのデータも同じタッチでデザインされていて、多くの決算資料を読む投資家にもより親しみやすいものになっている。
「通常、決算資料はお堅い感じがするじゃないですか。そこにちょっと遊びを入れてフレンドリーにしたかった。翌年度は、全4回で完結する連続ドラマ仕立てにしました。さすがにやりすぎたかもしれませんが、親しみをもって皆さんに受け入れてもらえました」
「いいこと」を声高に問うつもりはない
取引先や消費者、株主らと良好な関係を構築しているZOZO。それぞれをつなぐハブとしての影響力を自覚しているからこそ、澤田は「私たちが率先してやりたいことやいいことをやっていけば、社会への波及効果も大きい」と語る。ZOZOは経営戦略に「MORE FASHION ×FASHION TECH~ワクワクできる『似合う』を届ける~」を、サステナビリティステートメントに「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」を掲げる。これらを実践することにより、「いいこと」がZOZOのプラットフォームから社会へ広がっていくというわけだ。