モビリティ

2024.11.19 17:45

EVのバッテリー容量を復活させる謎の液体

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EVもスマホと同じく、充放電を繰り返すうちにバッテリーの容量が低下していく。だが高価なEVをおいそれと買い換えるわけにはいかない。バッテリー交換で済まそうとしても、車種にもよるが100万円以上の費用がかかる。EVの普及にともない劣化したバッテリーの廃棄問題も露わになってきた。そこで、バッテリーを長持ちさせる技術が重要になるのだが、トヨタ自動車は画期的な方法の開発に成功した。

豊田中央研究所とトヨタ自動車は、EVのリチウムイオン二次電池の低下した容量を、特殊な液を注入するだけで回復させる技術を発表した。それは、リチウム金属とナフタレンを混合したリチウムナフタレニド溶液と、イオン分子を安定に溶解する高誘電率溶媒との混合液だ。使用済みバッテリーを解体してリサイクルする必要もなく、そのまま継続して利用できる。
電池容量回復技術のイメージ図。

電池容量回復技術のイメージ図。


理論計算と機械学習で容量回復メカニズムを解明し、混合液の最適な電位条件を検討した結果、使用済みリチウムイオン二次電池の容量を、注入前に対して20〜25パーセント回復させることができた。また、注入後、充放電を100サイクル繰り返しても劣化はほとんど生じないことが確認された。この効果は、車載用サイズの中古電池でも認められている。

日本で販売されるEVには、たいてい、新車購入から8年または16万キロ走行までに容量が70パーセントを下回れば無料で交換するという保証がついている。しかし、それを過ぎて有償で交換するとなると、バッテリー容量の小さい軽自動車を除く普通車の場合、100万円から300万円ほどかかると言われている。それだけに、こうした簡単な復活剤はじつに画期的で有り難いものだ。

しかも、リチウムイオン二次電池に使われているリチウムは、日本ではほとんど産出されないレアメタルなので、資源の有効活用、安全保障、環境保護という面でも大いに歓迎すべき技術だ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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