閉塞感ばかりの事業承継で、日本がよくなるわけがない
──日本経済のためには、中小企業のポテンシャルを生かす必要があるということですね。
吉川:事業承継をきっかけにして良い経営者を生み出していければ、企業って絶対良くなるという感覚があります。そうした事業をやるべきだと思っていました。
手操:私は事業承継ばかり関わっていました。親族承継や従業員承継が多かったのですが、発展のためというより、負債や辞められない事業をどう引き継いでいくかといった閉塞感のある事業承継がすごく多かったです。
家業を継いでいくっていうのと、ほぼイコールの話なので、そこでチャレンジしてイノベーションだとか、さらなる発展というようなことが起こるような現場にはあまり思えませんでした。
そうなると経営者が代わらないといけない。人材紹介なども始めてみたのですが、それだけでは難しい。経営権とか所有権も含め、誰か新しい人が継いでいくことをやらないといけないとすごく感じていたところですね。
──事業承継がうまくいかない会社は多くあります。コンサルなどは第三者で、当事者意識を持ちきれない部分もあるのでしょうか。
手操:そこをやり切ろうと思うと、やっぱり「サポートだけ」の立場からでは難しいのではと思いました。
平井:当事者となって、エクイティ(資本)をしっかりと活用しなければ何も物事は変わらないないというのが、すごい強い原体験としてありました。経営者だけでもだめだし、資本だけでもだめなので、そこをセットでやるからこそ初めて意味のあるものになるのだと思います。
──株を持つことで当事者意識も持つことができると考えたわけですね。
平井:そうですね。融資だと銀行とお客さんだったのが、ファンドになったときには、何かパートナーになるっていう表現が近いと思います。
500人の後継者候補から選抜
──SoFunの事業内容について教えてください。吉川:まず我々は後継者候補を全国から集めてきます。いろんなイベントで募ったり、あと直接応募いただいたりする後継者候補の方も最近がすごく増えています。僕らがメディアに出る機会が増えるにつれて「経営者を目指しています」みたいな方とかも出てきています。
もう延べ500名以上はエントリーしてもらいました。その500人の中から選抜をして今10数名と一緒に活動をしています。
──手を挙げる方はどのような方が多いのでしょうか。
平井:30代から40代のUターンを希望される方がボリュームゾーンですね。今、東京・大阪の会社で部長や課長の職にある方が、もっと身近なところで自分の力を生かし、社会的なポジティブなインパクトを与えたいという方が、一番ボリュームゾーンで集まっていただいています。
吉川:あとは、承継に困っている企業から相談が来るパターンです。一緒に投資検討をして、あとは我々と後継者候補で一緒に事業プランを描いたりします。
通常のM&Aだと、急に相手がどんって決まって後継者が誰なのかも分からない状態ですが、我々は入口から後継者候補を据えていくので、M&Aじゃなくて顔が見える事業承継です。そういう感じのことを望むオーナーさんも結構いらっしゃいます。それは、数多く生まれているM&Aコンサルとは全然違うわけです。