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2024.11.09 09:30

「サステナブルな事業と社会」アステラス製薬 岡村直樹CEO

岡村直樹|アステラス製薬 代表取締役社長CEO

2024年10月24日発売の「Forbes JAPAN」12月号では、「新・いい会社100」特集と題して、全上場企業対象、独自調査・分析で作成した、「ステークホルダー資本主義ランキング」「自然資本ランキング」「脱炭素経営ランキング」「サプライチェーンランキング」「リスキリングランキング」などを紹介している。それぞれのランキング上位企業、計8社のCEOインタビューや早稲田大学商学部教授のスズキトモ氏、東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏らのインタビューコラム等も掲載している。

2024年版「自然資本ランキング」と「脱炭素経営ランキング」で1位に輝いたアステラス製薬。「用心深く楽観的」な岡村直樹が、同社の事業と社会のサステナビリティ向上に向けた経営戦略を明かす。


自称「Caut iously Opt imist ic」(用心深く楽観的)で、仕事には「ものすごく厳しい」。単刀直入に本質を突く鋭さと、誰とでも本音で向き合う開放性。人に何かを教えるのが好きな性分で、「昔は教師になりたかった」というのがよくわかる。

岡村直樹が率いるアステラスは、世界70 カ国以上で事業活動を展開している製薬企業である。「Focus Area アプローチ」と呼ばれる独自の戦略でアンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいる。

製薬会社は生命関連企業だ。本業とSDGsが完全に重なり合っている。「さまざまなステークホルダーの皆様から信頼されることで、我々のビジネスのサステナビリティも向上する」と岡村は言う。

「脱炭素や自然環境に配慮した取り組みはもはや、やって当然。やらないとマイナスの評価につながる」

2021年に掲げた中期5カ年計画「経営計画2021」では、戦略目標のひとつにサステナビリティ向上の取り組みの強化を掲げた。成果は着実に出ている。水については、水資源と経済活動との関連を「水資源生産性」という指標で評価し改善に取り組む。23年度の水資源生産性は16年度比65%で、「25年度末までに20%程度向上」という目標を大幅にクリアした。

廃棄物に関しても、廃棄物発生量と経済活動との関連を「廃棄物発生量原単位」という指標で評価し、16年度比で23%改善と目標を軽やかに超えた。生物多様性については、劣化をもたらす危機を環境汚染、資源消費、気候変動に分類し、「生物多様性指数」を用いて改善の程度を把握している。こちらも23年度時点で05年度の4.9倍と、目標を前倒しで達成した。

脱炭素はどうか。「経営計画2021」ではGHG(温室効果ガス)の排出量(Scope1+2)を30年度までに15年度比で63%削減するという目標を掲げている。23年度のScope1+2は15年度比40%減だった。一方、Scope3(サプライチェーンのGHG排出量)は、「30年度までに15年度比37.5%削減」というゴールに対して現時点で19%減。外部の関係者を巻き込みながら取り組みを加速できるかどうかが目標到達への鍵を握る。

そこで、アステラスでは24年度から、同社と関わりのある取引先を対象に「アステラス・サステナブル・ビジネスパートナーサミット」の開催を始めた。同社の経営陣が、当社のサステナビリティへの取り組みにおけるパートナーの役割や期待について共有するというものだ。

「Scope3については、我々が排出量を削減したいと思っても、技術的な制約などがあってできないパートナーさんもいます。『ここまでならできる』というところで折り合いをつけながら、一緒に歩んでいく道を模索しているところです」
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文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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