サイエンス

2024.11.09 10:00

北米の太平洋に住むシャチが陸上生物の「ヘラジカ」を狩る理由

ヘラジカは陸上生活に最適化されているが、驚くほど泳ぎが上手で、一度に何キロメートルも泳ぐことができる。うっそうとした森を移動するのに適した長い脚は、水中を進むのにも適している。

ヘラジカはこの能力により、オオカミやクマといった陸の捕食者をうまく避けてきたが、時折、シャチのような有能で力強い捕食者の餌食になる。シャチは通常、魚や海鳥、大型海洋生物(ホホジロザメなど)を捕食するが、場合によっては、ヘラジカのような沿岸の獲物も捕食する。

もう一つの理由は海の地形

米国のアラスカ州と、カナダ、ブリティッシュコロンビア州の沿岸は、フィヨルドや入り江で縁取られている。そのため、ヘラジカが島のあいだや海岸線を泳ぐと、シャチの縄張りに入り込んでしまう場合がある。このような深い海域では、ヘラジカの泳ぎをもってしても、環境を熟知したシャチの群れにはかなわない。

体長9メートル、体重10トンを超えることもあるシャチは、最高時速55キロメートルで泳ぐことができる。シャチは、フィヨルドや入り江の深く狭い水路で、そのスピードを生かし、ヘラジカとの距離を急速に縮め、ヘラジカが安全な岸に戻る前に攻撃を仕掛ける。

ヘラジカの捕食は、シャチにとっては自然な食性の一部ではないが、条件が整えばこの賢い哺乳類は、ためらうことなく、いつもと違う獲物を狙う。シャチにとってヘラジカは、アザラシやアシカと同じタンパク源の1つにすぎない。栄養価の高い大型の獲物を捕まえるチャンスを逃すはずはないのだ。

forbes.com 原文

翻訳=米井香織/ガリレオ

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