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2024.11.07 09:00

米ハーバード大から生まれた「歯科向けAI」企業、評価額840億円に

Shutterstock.com

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歯科治療を受ける人々の多くは、医師からレントゲン写真を見せられて、治療が必要な部分を把握している。しかし、ほとんどの人々は、実際に何を見ているのかを理解できず、ただ頷いているだけだ。

ハーバード大学のイノベーションラボからスピンアウトしたOverjet(オーバージェット)のCEOを務めるワルダ・イナムは、この状況を変えようとしている。

彼女の会社が開発したIris(アイリス)と呼ばれるスマート画像システムは、数百万枚の歯科画像を学習した人工知能(AI)プラットフォームを活用して、ぼやけたX線画像を鮮明にし、ビジュアル情報を加えて、歯の問題を分かりやすく提示する。

「私たちのAIシステムは、レントゲン写真の内容を理解した上で、分析を加えています」と、37歳のイナムは述べている。

コンピューター科学者と歯科医のチームが2018年に設立したOverjetは、ハーバード・イノベーション・ラボからスピンアウトして始動した。歯科医の診断を支援するAIツールの開発を手掛ける同社は、これまで累計1億3400万ドル(約204億円)以上の資金をゼネラルカタリストやインサイトパートナーズなどの投資家から集め、評価額は5億5000万ドル(約838億円)に達している。

イナムによると、同社の製品は、全米の数千人の歯科医に利用されている。Overjetは、歯周病を評価するための測定ソフトウェアで2021年に初めての米食品医薬品局(FDA)の認可を取得し、2022年には虫歯の輪郭を示すソフトウェアの認可を取得した。さらに、2023年には、歯の神経が死んだ場合に起こる感染根管の兆候を検出するためのAIシステムの認可を取得した。

そして、直近では子供の虫歯を検出するソフトウェアや治療の記録を自動化するシステム、AIを用いて歯の画像を鮮明にするソフトウェアでも認可を取得した。Irisのスマート画像システムは、同社がこれまで開発したすべてのAI機能を組み合わせたもので、虫歯を赤い色で強調したり、データを示すことで、患者が歯の問題を理解しやすくしている。

OverjetのAIプロダクトは、すでに米国の2000以上のクリニックで使用されており、Irisも今後の全米展開を計画中という。同社の次の新たなステップは、プラットフォームに3D画像の処理機能を追加して、より広範な歯の問題の把握を可能にし、医師と患者の両方を支援していくことだ。

「歯科向けのAIは、もはや当たり前のツールになりつつあります。このプロダクトは、歯科医がより効果的な治療を行えるように支援し、患者に最高のケアを提供します」とイナムは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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