テスラに見切りをつける投資家
マスクのトランプへの熱烈な支持と、「DEI」と総称されるダイバーシティや公平性、包括性に反発する姿勢は、約18億ドル(約2740億円)相当のテスラ株を所有する米国最大の公的年金基金であるカリフォルニア州公務員退職年金基金(カルパース)にテスラへの投資を見直させる事態にもつながった。一方、バイデン政権のクリーンエネルギー政策に反発するトランプは、当選すればマスクを政権の要職に起用する意向を示しているものの、自動車業界のアナリストは、トランプがEVの購入者向けの補助金を終了させると述べていることから、「EVの成長は鈍化する」と予測している。世界一の富豪であるマスクは、それでも過去1年間で、自身のスーパーPAC(特別政治活動委員会)を通じてトランプと共和党に1億2000万ドル(約184億円)以上を献金している。
一方、マスクがX(旧ツイッター)上でトランプへの支持を呼びかけ、誤情報を拡散していることも大きな問題だ。マスクが立ち上げたスーパーPACである「アメリカPAC」は、カマラ・ハリス副大統領が「全国的な銃の買い取りキャンペーンを強化している」「石油やガスの採掘で用いられるフラッキング(水圧破砕法)を禁止しようとしている」などという虚偽の主張を展開する「Progress 2028」というサイトを支援しており、マスクのxAIのチャットボットGrokもXで虚偽の情報を広めている。マスクはまた、自身が作成した請願書に署名した激戦州の有権者に100万ドルの現金を配ると宣言したことで法的問題に直面した。
マスクの右派への傾倒に拒否感を示しているのは大口の投資家ばかりではない。マイアミを拠点とする写真家ナンシー・ネイのような個人投資家も今年、保有していたテスラの株をすべて売ったと述べている。
「私はマスクの反ユダヤ主義的な発言に対する嫌悪感から、テスラの株を売却しました。彼の陰謀論への傾倒や、Xを自身の狂った主張のプラットフォームとして利用していることも理由の1つです。今や彼はトランプを支持し、彼のために嘘をつき、票を買おうとしているのです」