みんなの銀行は、21年1月に開業した傘下の日本初のデジタルバンク。預金や決済、ローンなどのサービスをスマホで提供するだけでなく、BaaS(Banking as a Service)事業では、ほかの事業会社に対してAPI連携で銀行機能を提供する。
当初計画は3年で単年黒字化だった。しかし、3年目に当たる24年3月期は93億円の赤字に。2日前に開催したアナリスト向け説明会では、注力するBaaS成長戦略を説明し、既に修正計画を発表していた27年度の単年黒字化をあらためて掲げた。
「かねがね投資家のみなさんから、うまくいかない場合について質問をいただいていました。そこで成長戦略を説明したうえで、プランBとして撤退や事業転換について言及しましたが、プランBだけが報道されてしまった」
メディアによる発言の切り取りや誤報があった場合、企業はプレスリリースで対応するケースが多い。しかし、五島は事態を重く見て、「翌日、自分が会見を開く」と決断。各社が会見内容を報じたことで鎮静化に向かった。
「『撤退を考えているのならBaaS事業の連携協議を中止する』と伝えてきたお客様には、私が直接行ってご説明し、継続いただけることになりました。驚いた社員もいたと思いますが、会見したことで、みんなの銀行をしっかり成長させなくてはいけないという意識がより強くなった。“雨降って地固まる”です」
FFGは既存ビジネスの成長を掲げる一方で、新しいビジネスモデルの構築にも取り組んでいる。BaaSによる他社との連携はそのひとつであり、トップが動くことで新ビジネス創出への強い思いを示したのだ。
実は既存事業でも注目の動きがあった。今年1月、傘下の福岡銀行を含む九州・沖縄の地銀11行が、「新生シリコンアイランド九州」実現に向けた連携協定を発表した。背景にあるのはTSMC熊本工場の開業である。経済波及効果は10年間で推計20兆円。Tier1企業との取引はメガバンクが握っているが、半導体産業のすそ野は広く、地域の企業がサプライチェーンにくわわれば地銀の出番が増える。
とはいえ、一行でできることには限りがある。地元の地銀が連携すればシンジケートを組んで融資したり、「台湾の企業や互いの顧客を紹介し合う」ビジネスマッチングも容易になる。この連携を呼びかけたのが五島だった。
「まずお膝元である肥後銀行の笠原慶久頭取に話をしました。去年、私は地銀協の会長を務めていて、笠原頭取とは会議でよくお会いしていました。そこで軽く打診したら感触は悪くなかった。正式に電話でお話しすると、その場で快諾いただいた。その後、ほかの頭取のみなさんも『九州の経済のために』と賛同してくださった」