テンパスAIは、収益の半分以上を医師や病院から送られてくる患者サンプルの遺伝子解析から得ている。同社を利用する医師は、患者の腫瘍を発見すると、その一部をシカゴ、アトランタ、ローリーにあるラボに送り、ゲノム解析を通じて腫瘍の成長を引き起こす特定の遺伝子変異を知ろうとする。テンパスAIは、その結果を、似た患者の検査データや臨床データが収められた200ペタバイトの機械学習データセットを用いて分析する。
同社のもう1つの収益源は、その膨大なデータを外部の研究所にライセンス提供する事業だ。世界の上位20の製薬企業のうちの19社がテンパスAIの200ペタバイトのデータセットの一部をライセンス購入しており、JPモルガンのアナリストによれば、その価格は15万ドル(約2290万円)から50万ドル(約7615万円)、さらには数億ドルに達する場合もあるという。ここには、アストラゼネカやグラクソ・スミスクラインといった製薬大手との数億ドルの契約が含まれている。
「アップルと同等の規模」へ
テンパスAIは、これらの2つの収益源を組み合わせることの先駆者で、米国内の腫瘍医の約50%と協力している。同社はまだ黒字には達していないが、2つの収益源の組み合わせにより利益率が向上しており、特にデータとサービス部門は、「がん以外の疾患分野での大規模な拡大が難しいとされるゲノム解析よりも高い利益率を持っている」と、医療分野のアナリストのブルース・クインは述べている。しかし、テンパスAIの今後の道のりは決して容易ではない。この分野には、大手の競合がいくつも存在し、その中には2018年に製薬大手ロシュが43億ドル(約6550億円)で買収したファンデーション・メディシン(FMI)やフラットアイアンヘルス、2018年に上場した時価総額が27億ドル(約4112億円)のガーダントヘルスなどが含まれる。
レフコフスキーは、同社が様々な課題や懐疑論者たちに直面しつつも、成長の余地はまだ大きいと述べ、来年には黒字化する見通しだと主張している。一方、2005年以降にレフコフスキーが創業した全ての会社に出資しているNEAのゼネラルパートナーのピーター・バリスは、テンパスAIを「人工知能とヘルスケア業界の交差点に置かれた巨大な実験場」と表現し、「次のグーグルやアマゾンは、この分野から生まれるだろう」と述べている。
レフコフスキーも、この見方に同意しており、ゲノム解析やビッグデータ、AIの3つの領域でいくつか巨大企業が生まれるだろうと述べて、テンパスAIがその3つに取り組んでいると主張した。
「私は、この会社が自分のキャリアの持続的な遺産になることを望んでいる。この会社は、私のこれまでの会社とは全く異なる可能性を秘めている。アップルと同等の規模に成長すると感じた事業はこれが初めてだ」と彼は語った。
(forbes.com 原文)