最初に登場したのは秋田の名店『日本料理たかむら』の髙村宏樹シェフが、肉の匠・上田伸也氏の育てた但馬玄に対峙した一品。ゲスト一同、昆布〆され更なる旨みを増したミノとカイノミのユッケに覚醒し、柔らかく香ばしいハツの炙りの余韻に酔いしれる。
次に供されたのは目黒『鳥しき』の池川義輝シェフによる、芝浦ほるもんのハラミを挟んだサンドウィッチだ。肉の匠・中川篤志氏の丁寧な仕事を施された薫り高いハラミは、ジューシーさの中に凝縮感と旨味があり、心地よい充足感に満たされた。
3品目に登場したのは、西麻布の隠れ家ビストロ『グルマンディーズ』の長谷川北斗シェフによる定番メニュー、カルパッチョ。予約困難店のスペシャリテを体験できるだけで心躍るが、肉の匠・谷口拓也氏が育てた極上の万葉牛のイチボを使用しているというから特別感もひとしおだ。艶っぽいシルクのような肉質の、繊細さとダイナミズムの妙にため息が漏れる。
「八将牛」にかける想い
4品目は、『焼肉うし松』の平久保辰郎シェフが手掛けた「八将牛」の厚切りサーロインステーキ。この肉こそが、EXILE SHOKICHIが大橋遼太氏と試行錯誤して完成させ、まさに今回が初お披露目となったブランド牛だ。その経緯を大橋氏に尋ねたところ、「私には長年、純血但馬牛(※)を北海道で育ててみたいという夢がありました。『独自の牛を育て地元北海道を盛り上げたい』という想いを持ったSHOKICHIさんとの出会いによって、その夢が実現しました」と語る。(※)兵庫県において他血統との交配を絶つ閉鎖育種によって血統が守られた黒毛和牛
とはいえ、古くから兵庫県にルーツを持つ但馬牛を北海道で育てるのは容易ではなかった。失敗を繰り返しながらも試行を重ね、成長スピードに合わせて適切な餌を選ぶなど独自の飼育法を確立。5年がかりで納得がいくブランド牛「八将牛」を完成させたという。
「SHOKICHIさんから、カリフォルニアワインの素晴らしさを世界に広めた『パリスの審判』の話を聞いて、目指すのはそれだ! と思ったんです」と語る大橋氏。北海道というテロワールに誇りを持つ2人によって完成したブランド牛は、脂質に透明感があり、一口頬張ればまたすぐに食べたくなるような味わい深さに溢れている。咀嚼するたびに鼻腔をくすぐるその甘美な余韻に、兵庫県産の純血但馬牛に勝るとも劣らない凄みを感じた。