人間との関係があってこそのテクノロジー、とは

(左から)森ビルの桑名功、陶芸家/建築家の奈良祐希、Forbes JAPANの谷本有香

谷本:さまざま活動されるなかで、お二人が感じる「世界に発信できる日本らしさ」とはどのようなものでしょうか。
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奈良:アートフェアに出品すると、僕の作品はよく「日本らしいね」と言われます。造形的な繊細さや軽やかさが欧米にはないものとして評価されます。

一方で、最近ひとつ気付いたことがあるんです。僕は海外からのゲストを迎えたときによく作陶を体験してもらうんですが、例えばアメリカの人は土をガガガガ!と形にしてぱっとどこかに行ってしまう。対して日本の方は3時間、4時間、5時間とずっと丁寧に作っている。でも先日みえたアメリカからのゲストは、ものの20分程度で僕の父も驚くような作品をつくってしまった。

いまや日本の工藝は、Craftではなく「KOGEI」として世界で通じる単語になりました。工藝がグローバル化し、谷本さんが問うように世界に発信できる日本らしさを考えていかないといけない時期にあります。テクノロジーの活用も含めて、丹念に時間をかければ日本らしくなるのか、ということは議論すべき段階にきていると思います。
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桑名:特に「Perfume Disco-Graphy展」を通じて感じたのは、日本のクリエイティブが、テクノロジーのなかにもある「余韻」や「余白」を感じ取る部分に発揮されていることです。テクノロジーがすべて人間に完璧に合わせられるのであれば、人間が引っ張られていくことにもなるわけですが、実際は人間とテクノロジーがバランスを取る必要がある。この部分でのテクノロジーの使い方に日本らしい「空気の読み方」のようなものを感じています。

谷本:最後に、「街に開かれた建築が文化で場の価値を高めていくには」という話を伺っていきたいと思います。奈良さんはどのような考えで、金沢の建築をつくられたのでしょうか。

奈良:実は金沢って町家建築が多かったり、外に開いてコミュニケーションすることが苦手という地域性があるんです。では、外に向かって開くのではなく、内側に開くという概念ではどうかと考えました。

2つの建屋の間は狭く見えるんですが、ここには路地が設計されていて人が通過していく動線がある。外に向けて物理的に広がっていることが必ずしもネットワークを作ることにはならなくて、内側に豊かな空間を作り、外から人を引き込んでいく形のほうが実は機能するのではということにチャレンジしています。
奈良祐希 / EARTHENが設計した「Node Kanazawa」

奈良祐希 / EARTHENが設計した「Node Kanazawa」

谷本:TOKYO NODEはまさに東京のなかでそういう場になっていくと思うのですが、桑名さんからTOKYO NODEという場をどういう形でバリューアップしていきたいのか、未来へのロードマップをお聞かせください。

桑名:蜷川実花展では、1日で何千人もの方にご来場いただいたのですが、そうすると街の様子が一気に変わるんですよね。そんなTOKYO NODEの影響力を実体験として持ったことで、次のステップをやらないといけないという思いを強く抱きました。

それは、TOKYO NODEが目的を果たしたらそのまま帰ってしまう場所ではなく、街に来た人がどんどん次の目的地を見つけられるような場所になることです。一つの具体的な取り組みはXRの活用です。街のなかにデジタルツイン化したコンテンツを散りばめていくことで、街にハード面だけじゃない楽しみ方を作っていくことにチャレンジしていきたいと思っています。

文=青山鼓

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