2024年10月3日には、フラッグシップストアである六本木ヒルズ店を舞台に、Forbes JAPANとのコラボレーションによるイベント「Special Night Event in Tokyo – Enjoy Life without Boundaries 境界のない人生を楽しもうー」を開催。トークセッションでは、過去に「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」を受賞した次世代を牽引する2名がエストネーションのセットアップを身に纏い、「発想の転換・相反するものの融合による“価値創造”」をテーマに言葉を交えた。
今回は、登壇者の1人である吉田勇也にインタビューを実施。アート産業の発展を通じて日本から新しい文化・芸術産業のエコシステムを創造し、都市における人々のウェルビーイングな暮らしの実現を目指す吉田に、ビジネス上の価値創造の方法から日常生活におけるスタイリング、オンオフの切り替え方までシームレスに話を訊いた。
2019年に株式会社HARTiを創業し、多くの現代アーティストをコミュニティと最新テクノロジーでプロデュースしている吉田勇也。もともとは国内における次世代の産業を生み出すことを目標に掲げ、日本が強みを発揮する食・観光・IP(知的財産)の中からIP産業に着目。その中でもアートの領域で新しいマーケットをつくるために奔走している。
「日本はバブルが弾けて以降、アート市場がどんどん下降している現状にあります。その一因は、新しい市場をクリエイトできる人がいないことにある。そこで我々は、デジタルに強いチームであることを強みに、アーティストが安定して持続的な収益を得られるようなシステムやアート作品に気軽に触れられるプラットフォームの創出に取り組んでいます。HARTiは『感性が巡る、経済を創る』という企業理念を掲げていますが、アートを経済価値にどうつなげるかが課題です」
HARTiが展開する「アートに触れる場」の一例が、「HARTi Photo®」という新しいフォトブースだ。いわゆるプリクラ機だが、アートIPなどのコンテンツとコラボした限定フレームで撮影ができたり、撮影したデジタルデータをNFTとして保存したりすることもできる。コロナ禍以降に盛り上がりを見せているインスタントフォト市場や韓国プリ機の成長を参考にしつつ、新しいアートとの接点を生み出している。
「私たちのミッションのひとつは、アーティストが世界中の多くの人に作品を発表することができるメディアをつくることです。例えば漫画家であればウェブトゥーンや電子コミックという手段がありますが、アーティストは未だに高い保険をかけてキャンバスを運ばないと海外で個展すらできない。インディーズの多いアート市場でそれを実現できる人は少なく、私たちはXRやWeb3といったテクノロジーを用いたデジタルプラットフォームを提案してきました。HARTi Photo®はフィジカルとデジタルを掛け合わせたメディアで、直感的にアートと触れ合える体験を提供しています」
フィジカルとデジタル、相反する価値観の融合がもたらすもの
今回のトークセッションのテーマは「相反するものの融合による“価値創造”」だったが、フィジカル(アナログ)とデジタルが融合したHARTi Photo®はまさにその一例だ。世の中にあふれる多様な価値観とその接続について、吉田はどのように考えているのだろう。
「相反するものの接続という意味では僕の中で2つテーマがあって、それが“アナログとデジタル”、そして“人間とAI”です。現代においてはすべてをデジタル上で完結させることができてしまうけど、それだけだとやはりつまらない。昨年、チェキとレコードが過去最高売上を記録したそうなのですが、やはりアナログ特有の体験や感性というのは特別なものだと思います。HARTi Photo®ではフォトブースから紙の写真が出てきて、それをQRで読み込んでSNSで拡散することもできる。そうした掛け合わせに可能性を感じています。
もうひとつの“人間とAI”というのは、一般的には対立構造で語られることもあります。ただ、コンビネーションによって人々がより楽しく生きていくことができると思っているんです。HARTiでは『最小の人数で最大の付加価値をつくる』ということをミッションに掲げていますが、AIを活用して仕事が効率的になると、自ずと人は解放される。その時間に、クリエティブなアーティスト活動が入り込む余地も生まれると思います」
オンとオフを接続する、気楽で社交的なファッション
この日行われたトークセッションでは、エストネーションのセットアップを着用した吉田。エストネーションのストア名の由来には「東の国」からという想いが込められ、原点となったのは「東京発信」という発想。ノンストップで変化を続け、新しい姿を現す街、東京。その独自のエネルギーをファッションに表現している同ブランドは、アーティストが世界に発信するための橋渡しをする吉田の事業にも通じるものがある。エストネーションでは「Designers(デザイナーズ)」「Dress(ドレス)」「Contemporary(コンテンポラリー)」「Casual(カジュアル)」の4つのカテゴリーに分けてセットアップを展開しているが、この日、吉田は「Dress」を選んだ。
「オンでもオフでも着ることができる服がいいなと思ってこれを選びました。僕は仕事柄、国内で遠出したり海外に行ったりすることが多くて、新幹線や飛行機での移動が頻繁にあります。そのときの服装はいつも迷うんですよね。リラックスしたいけれど、部屋着のような服装で行くわけにはいかない。人と会っても恥ずかしくない格好をしておけば、移動中にもし知り合いや取引先と出会いがあったとしても対応できます。
大事な商談から移動時間、今日のようにイベントに登壇する機会まで、TPOへの配慮が求められるさまざまなシーンの中でもこのセットアップが一着あれば安心だと思いました。薄手で脱ぎ着しやすいうえに、ニットなどにも合わせやすいデザインが気に入っています。僕は、ビジネス上の相手に対してあまりオフェンシブな印象を与えないファッションを気にかけているのですが、その意味でチャコールグレーの色合いも素敵だと思います」
吉田が選んだ舞台上に飾られたもう一着「Casual」については「やはり移動時にも楽に過ごせそうなカジュアルさがありながら、ビジネスシーンでも違和感なく着こなせるセットアップである点が選んだ決め手です」と一言。日常生活の中でオンオフの境があまりなく、常に誰かに見られている意識を持ちながら生活している吉田にとっては、“気楽さ”と“社交性”の融合がファッションのテーマであるようだ。
日本人起業家として、海外での成功例を示したい
最初に起業したのが19歳だったこともあり、プライベートを重視するより仕事に熱量を傾けてきた吉田。しかし、家族ができ、30歳になろうというタイミングで、仕事と休みのバランスについて意識し始めることが増えたという。そのなかで実践しているのが、アクティブレストという休み方だ。
「休みだからと家でダラダラ寝て過ごすのではなくて、軽く体を動かすことで回復するという方法ですね。スカッシュが好きなので、広尾のコートに行って友人とスカッシュをして、夜はサウナに入ったり、焚き火をしたり。ただ休むのではなく人と交流できる機会にもなっています。
普段の生活ではずっと仕事のことも考えているのでオンオフは特にないのですが、海外出張に行くとモードが切り替わる感覚があります。日本にいると常に仕事モードだけど、これから新しい価値を展開できそうな国にいると勝手にワクワクし始めて、肩の力が抜けるんです。海外でビジネスやアートの現場に触れることが、自分にとっては大事なリラックスタイムであり今後やっていきたいことに向き合う時間になっています」
そんな吉田が、HARTiのCEOとしてこれから実現していきたいこととは。
「日本人起業家として、海外での成功例を一つつくりたいというのがあります。海外に出ていく起業家も多いですが、英語ができないとかコミュニケーションが苦手だとかで、挫折してしまう人も多い。HARTiとしてはしっかり成果を残して、海外でもやっていけるという指針を後進に示したいですね。
また、一番の目標は、日本にとっての国益になる文化を世界に浸透させることです。自動車産業が有名だから日本に来ましたという人より、漫画やアニメを見て日本に興味を持つ人のほうが圧倒的に多い。そうした日本独自の文化がより世界中に浸透していけば、長期的に見て自分が仕事を引退したあとも日本に来る人を増やすことができると思うんです。日本と海外をつなぐ、ジョン万次郎みたいな存在になりたいですね!」
エストネーション
<読者限定クーポン配布中>
https://www.estnation.co.jp/special/2024aw_forbes
よしだ・ゆうや◎1995年、広島県生まれ。6歳で書道を始め、書道家として活動。19歳でフランス語のオンライン塾を起業し事業譲渡。その後大学を休学し英国留学。世界40カ国を巡り、2019年に「HARTi」を創業。