日本におけるテクノロジー領域のジェンダーギャップおよび「Women In Tech」の現状について、アドバイザリーボードのひとりでもあるNPO法人Waffle理事長の田中沙弥果に聞いた。
経済協力開発機構(OECD)加盟国38カ国を対象としたIT分野のジェンダーギャップに関する調査「データで見る世界のITエンジニアレポート」(ヒューマンリソシア)を見ると、日本のITエンジニアにおける女性比率は16.9%。データが取得できた34カ国中22位と低いです。
1位イスラエル28.0%、2位フィンランド25.0%、3位エストニア24.5%と上位3カ国でさえ、女性エンジニアの比率は低いままというのが実態になります。こうした日本および世界の女性エンジニア比率が低い背景にあるのは、理工系学部学生の女子比率が挙げられます。特に日本は、OECD調査の大学に入学した学生のうち、STEM(科学・技術・工学・数学)分野に占める女性の割合が「自然科学(27%)」「工学(16%)」で比較可能な36カ国中最下位(19年)。同分野全体の女性比率は18%となっています。
日本におけるIT分野のジェンダーギャップの変化が数字ではまだ見えているとは言い難いですが、「社会課題の議題」として認識され、解消に向けたポジティブな動きやモメンタム(勢い)は加速しています。
東京工業大学を皮切りに、通常とは別の選抜法で女子を増やす「女子枠」が増加。山田進太郎D&I財団調査によると、24年度入試では、40大学で計約700人の枠が設けられます。国立大学法人10大学の理学部が23年、ジェンダーバランスの課題に取り組むことを宣言し声明を発表しました。
文系、理系の枠組みを取り払う文理融合の大学も増えています。また、全国平均女性比率が23%といわれる高等専門学校のなかでも、「神山まるごと高等専門学校」では23年4月の開校時、合格者の男女比率が1対1となる素晴らしい事例も出てきています。さらに、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が実施する「女子中高の理系進路選択支援プログラム」の予算も増額。加えて、山田進太郎D&I財団のような「35年にSTEM分野の大学入学者女性比率をOECD平均の28%に上げる」ことを掲げ、奨学助成金の提供を行う団体も出てきています。
ベンチャー企業をはじめさまざまな企業で格差是正の積極的な取り組みが始まっています。サイバーエージェントが「Tech DE&Iプロジェクト」を立ち上げたり、STORESが「2030年エンジニア女性採用比率30%」という目標を設定したりしています。また、メルカリが女性やLGBT+コミュニティの方などIT業界のマイノリティを対象にした、ソフトウェアエンジニア育成プログラムを実施しています。また、女性のためのコーディングブートキャンプを行うMs.Engineerや女性エンジニアの転職プラットフォームのbgrassといった女性エンジニアにフォーカスしたスタートアップも生まれています。