経済・社会

2024.11.06 15:15

採用人材は胃袋で掴め!「スズキ×インド人×結婚式場」のブルーオーシャン事業

中央が中野祐介浜松市長、左隣がスズキの鈴木俊宏社長、市長の右隣が鳥善の伊達善隆社長

中央が中野祐介浜松市長、左隣がスズキの鈴木俊宏社長、市長の右隣が鳥善の伊達善隆社長

日本料理店の未来形ビジネスを見るような、歴史的転換の事例が日本有数のものづくり都市、浜松にある。明治元年創業の料亭・鳥善だ。150年以上にわたり、多くの製造業を抱える浜松市の商談の場として、政財界の人々に愛され続けてきた。時代の流れと共に、料亭としての機能を果たし終えたと判断し、平成に入るとブライダル事業に本格的に参入。当初は畳の間での和婚がメインだったが、その後ニーズに合わせて全面改装。日本料理の伝統とフレンチを融合した、斬新な料理を提供する人気のレストランウエディング会場となった。2019年まで、2カ所の結婚式場の運営と、仕出し部門の2本柱で順調に事業を展開してきた。

しかし、コロナ禍で結婚式の施行がほぼなくなると、売上も経常利益も激減。2014年にUターン入社した伊達善隆は、折しもこのタイミングで6代目を引き継ぐことになった。

「あらためて自社の強みとは何かを見つめ直すところから成長戦略を立てていきました。

まずは100年以上、食の領域に向き合ってきたことで、幅広いジャンルの開発力がある。次に浜松の地で150年の歴史があることで地域のプレイヤーとのネットワークがある。そしてブライダル事業を通した高いホスピタリティ力がある。ここから、我々は原点である「食」の可能性を広げ、『人と街の幸せと可能性に向き合う』をパーパスに掲げました」(伊達)

伊達は「自分ゴトがあふれる街をつくる」をコンセプトに、2021年に街づくりのための(株)HACKの共同創業者となる。これは鳥善をはじめ、浜松を拠点に置く3社の共同出資によって設立されたもので、事業の一つとして2023年に「街食堂」を開店。浜松市内で人気の飲食店が、平日に週替わりでランチを提供している。会員企業となると、従業員は割引価格で喫食が可能になると同時に、この食堂で毎週水曜日に開催しているトークイベント「水曜日のヨル喫茶」でのドリンクサービスも受けられる。

スズキやヤマハ、ソミック、春華堂、須山建設、静岡銀行など浜松市に拠点を持つ会員企業が増え続け、開店1年で40社を超えた。ランチを提供するレストランにとっては新たな発信の場として、一方の利用者にとっては話題のランチが食べられると同時に、他社との交流の場として、地域コラボレーションの拠点となっている。
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文=真下智子

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