今年の大統領選に関する世論調査は、候補者が互角の戦いを繰り広げていることを示唆しているが、専門家たちはその正確性に疑問を感じている。
2020年の大統領選挙における世論調査は「過去40年間で最も不正確」とされ、バイデン大統領の得票率を実際よりも3ポイント以上高く見積もっていたが、その理由は未だに解明されていない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、世論調査の専門家の見方を引用し、パンデミックが調査への関心を低下させ、トランプの支持が強まったことを捉え損ねた可能性があると報じていた。
2016年には、ヒラリー・クリントンが「ブルーウォール(青い壁)」と呼ばれる民主党の伝統的な票田のミシガンやペンシルベニア、ウィスコンシンなどの激戦州で勝利すると広く予測されていたが、実際はトランプがこれらの州の全て勝利していた。
そして今、2024年の選挙戦が僅差で続く中、世論調査に対する懸念が再び浮上している。著名な統計学者のネイト・シルバーは、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)に対し、調査結果が誤っている場合は特に「小さな体系的な誤差」でも選挙結果に予測不能な偏りを生じさせる可能性があると述べている。
シルバーは、「どちらの側にもサプライズが起こりうる」としながらも、自身の「直感」ではトランプの勝利を予測している。今年の大統領選の世論調査結果を歪めている要因には、下記の2つが含まれているとされている。
「隠れトランプ」の存在
「シャイ・ボーター理論(Shy Voter Theory)」とは、トランプ支持者が自分の投票予定を正直に話さない可能性があるとする理論で、一部のトランプ支持者は、世論調査でそれを隠しているとされる。このため、今年の世論調査は、トランプの人気を過小評価している可能性があるという。しかし、統計学者のシルバーは、NYTの取材に、この理論は、2016年と2020年の世論調査が不正確だった理由にはなるかもしれないが、今年の世論調査には影響しないかもしれないと述べている。「多くのトランプ支持者は公然と支持を表明する熱心な支持者であり、自分の支持を隠すことはない」と彼は述べている。
また、「ブラッドリー効果」と呼ばれる理論も、トランプに有利な要因の説明に用いられている。この理論は、選挙において黒人候補者の実際の得票率が、世論調査を下回るとされる説で、1982年のカリフォルニア州知事選で、事前の世論調査では圧倒的に有利とされた黒人候補の元ロサンゼルス市長、トム・ブラッドリーが白人の対立候補に敗れたことに由来する。この理論は、多くの白人有権者が黒人候補者に投票すると言いながらも、実際は白人候補者に票を投じる傾向を指している。
オバマ陣営はこの見方に反対しており、2008年と2012年に比較的大差で大統領選を勝ち抜いたことで、これをある程度否定した。しかし、2024年の世論調査や、初の黒人女性大統領候補であるハリスにこの理論が当てはまると考える者もいる。統計学者のシルバーは、2016年の大統領選で、投票先を決めていない有権者の一部が最終的にヒラリーに投票しない傾向があったとして、これと似た性差別的な効果が見られたと述べている。
(forbes.com 原文)